最終更新: 2026年7月12日
区分所有者が住戸を購入後に第三者へ賃貸に出す「転貸(サブリース)」は珍しいことではありませんが、管理組合への届出をどこまで求めればよいか、賃借人が規約違反行為をした場合にどこまで対応できるかは、整理されないまま運用されている管理組合も少なくありません。ここでは区分所有法と標準管理規約の規定を確認したうえで、届出事項の整え方と規約違反時の対応の考え方を整理します。
専有部分を賃貸に出す場合、区分所有法46条により賃借人(占有者)にも規約の効力が及び、標準管理規約19条は区分所有者に対し、賃借人に規約・使用細則を遵守させる義務と、借用した旨を管理組合へ届け出させる義務を課しています。管理組合としては、貸与届の様式に賃借人の氏名・連絡先・緊急連絡先を明記させ、賃貸借契約書に規約遵守条項を盛り込んでもらうよう案内することが実務の起点になります。賃借人が規約違反行為をした場合でも、管理組合と賃借人には直接の契約関係がないため、まずは区分所有者(貸主)への是正要求から始め、改善しない場合に理事会決議を経た勧告・警告、必要であれば区分所有法57条に基づく請求へと段階を踏むのが基本の流れです。
この記事で扱う「転貸(サブリース)」は、区分所有者が自己の専有部分を、通常の賃貸借契約に基づき第三者に居住目的で貸し出すケースを指します。区分所有者本人が住まず第三者が長期間居住する点は民泊(住宅宿泊事業・簡易宿所としての短期貸し出し)と共通しますが、民泊は旅館業法・住宅宿泊事業法という別の法規制が関わり、管理規約で用途外使用として明確に禁止する対応が一般的に取られる点が異なります。通常の居住目的の賃貸(サブリース)は区分所有法・管理規約上、原則として制限される性質のものではなく、民泊とは切り分けて考える必要があります。
区分所有法46条は、規約及び集会の決議の効力について、区分所有者の特定承継人だけでなく「占有者」(賃借人など、専有部分を占有する者)にも及ぶ旨を定めています。これを受けて、標準管理規約19条は次の内容を定めています。
つまり届出の当事者は形式上「賃借人(第三者)」ですが、それを提出させる義務を負うのは区分所有者側という位置づけです。実務上は管理会社が定める貸与届(使用者届)の様式に、区分所有者・賃借人双方が記入して提出する運用にしている管理組合が一般的です。届出事項としては、賃借人本人の氏名・連絡先、対象住戸、入居予定日、緊急連絡先となる者の氏名・電話番号などが挙げられます。
通常の居住目的の賃貸であれば、標準管理規約準拠の規約では「事前の届出」が求められるにとどまり、管理組合の承認(許可)までは求めていないことが一般的です。ただし各マンションの管理規約は必ずしも標準管理規約どおりとは限らず、次のような独自規定を置いている管理組合もあるため、対応前に自マンションの規約を確認する必要があります。
区分所有者が不動産会社等のサブリース業者と賃貸借契約を結び、その業者がさらに実際の入居者へ転貸する「サブリース(又貸し)」型の契約形態を取るケースもあります。この場合、管理組合への届出上の「賃借人」が契約上はサブリース業者を指し、実際にその住戸に住んでいる人物(転借人)とは別人になる点に注意が必要です。緊急時の連絡や規約違反への対応を実効あるものにするためには、貸与届の段階で「転貸人(サブリース業者名・担当連絡先)」と「実際の入居者(転借人の氏名・連絡先)」の両方を明記させる運用にしておくことが望まれます。
賃借人(占有者)が共同の利益に反する行為をした場合、区分所有法57条に基づく行為停止等の請求は、区分所有者だけでなく占有者に対しても行うことができます。一方で、区分所有法58条の使用禁止請求は区分所有者に対してのみ行うことができ、占有者(賃借人)に対して直接請求することはできません。管理組合と賃借人の間には直接の契約関係がない点を踏まえ、実務では次のような段階を踏んで対応するのが一般的です。
いずれの段階でも、管理組合単独の判断で賃借人へ直接強い措置を取るのではなく、管理会社や弁護士に相談しながら進めることが望ましい対応です。
Q: 区分所有者が賃貸に出す旨を管理組合に届け出なかった場合、どうなりますか。
A: 標準管理規約に届出義務の規定がある場合、届出をしないこと自体が規約違反にあたり得ます。まずは区分所有者に届出を求め、応じない場合は理事会での注意喚起や、管理規約に基づく是正の働きかけを検討することになります。
Q: 賃借人にも総会の議決権はありますか。
A: ありません。議決権を持つのは区分所有者であり、賃借人はあくまで規約・使用細則の遵守が求められる占有者という立場です。
Q: サブリース業者との契約であることを理由に、届出を拒否されました。どうすればよいですか。
A: サブリース契約であっても区分所有者が専有部分を第三者(サブリース業者)に貸与している事実に変わりはなく、届出義務の対象になります。管理会社を通じて、転貸人・実際の入居者双方の情報を届け出るよう、区分所有者に改めて依頼するのが基本的な対応です。
専有部の転貸(サブリース)は、区分所有法46条・標準管理規約19条により賃借人にも規約の効力が及ぶことが法的な出発点です。届出様式で賃借人の連絡先・緊急連絡先を確実に把握し、サブリース業者を挟む場合は転貸人と実際の入居者を区別して確認する運用を整えておくことが、規約違反やトラブル発生時に迅速な対応を取るための土台になります。賃借人による規約違反行為への対応は、貸主への働きかけを起点に、理事会決議を経た勧告・警告、必要に応じた法的措置へと段階を踏むことが基本です。
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