管理組合の教科書

マンションの賃貸化率上昇と管理組合運営|総会出席率・議決権行使への影響と実務対応

最終更新: 2026年7月12日

区分所有者が住まず、住戸を第三者に貸し出す「賃貸化」は、多くのマンションで年々進んでいます。理事のなり手不足の一因として語られることが多い一方、賃貸化そのものが管理組合運営にどう影響し、何を対策すればよいかは整理されにくいテーマです。ここでは国土交通省の調査データをもとに実態を確認したうえで、賃貸オーナー・入居者それぞれとの向き合い方、総会運営の工夫を整理します。

結論

賃貸化が進むと、区分所有者が総会に出席しにくくなり、委任状・議決権行使書への依存が高まって決議が形骸化しやすくなります。まず賃貸オーナーの連絡先を最新の状態で把握し、総会資料を早めに送って議決権行使書の提出を具体的に依頼することが最初の一手です。それでも役員のなり手や出席率の低下に歯止めがかからない場合は、輪番制の見直しや第三者管理方式の検討を選択肢として並べておくと、理事会の負担が一部の区分所有者に偏る事態を避けやすくなります。

賃貸化率とは何か|国土交通省の調査データで実態を確認する

国土交通省が実施した令和5年度マンション総合調査によると、区分所有者本人ではなく賃借人が居住している住戸を1戸以上含むマンションの割合は77.8%で、前回調査から3.1ポイント増加しています。完成年次が古いマンションほどこの割合は高く、2015年以降に完成したマンションでは65.9%であるのに対し、1984年以前に完成したマンションでは87.0%に達します。

ただし、この数字は「賃貸住戸が1戸でもあるマンションの割合」であり、マンション全体に占める賃貸住戸の戸数割合とは異なる点に注意が必要です。同調査では、賃貸住戸のあるマンションのうち、賃貸戸数の割合が0%超〜20%にとどまるマンションが62.3%を占める一方、20%を超えるマンションは15.5%とされています。つまり「賃貸住戸が少し混ざっている」マンションが大多数であり、賃貸戸数が総会運営に無視できない影響を与えるのは、主に築年数の古い建物や、賃貸戸数割合が高い一部のマンションに集中しているといえます。自分のマンションがどちらの状況に近いかは、管理会社に依頼して住戸ごとの居住状況(自己居住・賃貸・空室)を確認してもらうところから始めるとよいでしょう。

賃貸化が管理組合運営に及ぼす影響

賃貸化率が高まると、管理組合の運営には主に次の3つの変化が現れやすくなります。

総会出席率の低下と委任状・議決権行使書への依存

賃貸に出している区分所有者は、多くの場合マンションから離れた場所に住んでいるため、総会に直接出席する割合は自己居住者より低くなる傾向があります。総会自体は委任状や議決権行使書の提出によって定足数を満たし開催できることが一般的ですが、区分所有者本人の議論への参加が減ることで、修繕積立金の値上げや大規模修繕の実施可否といった重要な議案について、実質的な議論のないまま可決・否決される状態になりやすくなります。

役員のなり手不足の悪化

賃貸オーナーは管理規約上、理事に就任する資格を持たない、または就任しても現地に住んでいないため実務が難しいという運用にしているマンションが少なくありません。賃貸化率が上がるほど、理事を引き受けられる自己居住の区分所有者の母数が減り、特定の住民に役員の負担が集中しやすくなります。

管理費・修繕積立金の滞納リスクへの目配りが必要になる

賃貸オーナーが遠隔地に住んでいる場合、住戸の管理状態や入居者とのトラブルに気づくのが遅れがちです。管理費等の口座振替が設定されていれば大きな問題は起きにくいものの、賃貸オーナーの連絡先が古いままだと、督促や重要な通知が届かず、滞納の発見や資料送付が遅れる要因になります。

賃貸オーナー(区分所有者)との連絡体制を整える

賃貸化による影響の多くは、区分所有者との連絡が薄くなることから広がります。次の点を確認しておくと、影響を小さく抑えやすくなります。

入居者(賃借人)との関係を区分所有者と切り分けて整理する

賃貸化への対応を考えるときに混同しやすいのが、区分所有者と、実際にそこに住む入居者(賃借人)の役割の違いです。総会に出席し議決権を行使するのはあくまで区分所有者であり、入居者にその資格はありません。一方で、管理規約・使用細則が定めるゴミ出しルールや騒音への配慮、共用部の使い方といった生活ルールは、実際に住んでいる入居者にこそ周知が必要です。

この役割の違いを踏まえ、多くの管理組合では、入居時に区分所有者(貸主)から入居者へ管理規約・使用細則の概要を説明してもらう、賃貸借契約に管理規約の遵守を盛り込んでもらうといった対応を、賃貸に出す際のお願い事項として案内しています。管理組合が入居者と直接契約関係にあるわけではない点を踏まえ、あくまで区分所有者を通じた周知という位置づけを崩さないことが実務上のポイントです。

対応の選択肢|輪番制の見直しと第三者管理方式の検討

連絡体制を整えても役員のなり手不足や総会運営の形骸化が解消しない場合は、次のような制度面の見直しを検討する管理組合もあります。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: 賃貸に出している区分所有者は理事になれませんか。

A: 管理規約の定め方によります。標準管理規約をもとにした規約では理事の資格を区分所有者本人に限定していることが多く、現地に住んでいなくても区分所有者であれば理事就任自体は妨げられない場合もあります。実務上は現地対応が必要な業務が多いため、就任後の役割分担を工夫している管理組合もあります。

Q: 賃貸オーナーの連絡先が分からなくなってしまった場合はどうすればよいですか。

A: 管理会社が把握している最新の連絡先を確認するほか、登記情報から所有者を確認する方法もあります。区分所有者には管理規約等で連絡先の届出義務を課しておくと、今後の同様のトラブルを防ぎやすくなります。

Q: 賃貸化率が高いマンションでは、必ず第三者管理方式にすべきですか。

A: 必須ではありません。連絡体制の見直しや輪番制の調整だけで運営が安定するマンションも多くあります。第三者管理方式は役員のなり手不足が深刻で、他の対応では立ち行かない場合の選択肢の一つとして検討されるものです。

まとめ

賃貸化率の上昇は多くのマンションで避けにくい流れですが、影響の大きさはマンションごとに異なり、区分所有者との連絡体制を整えるだけで改善する部分も少なくありません。まずは自分のマンションの賃貸戸数割合と連絡先の更新状況を確認し、総会資料の送付や議決権行使書の案内を工夫することから始め、それでも役員負担の偏りが解消しない場合に輪番制の見直しや第三者管理方式を選択肢として検討する、という順序で進めるとよいでしょう。

この記事について 本記事は、マンションの賃貸化と管理組合運営に関する一般的な論点を紹介する目的で作成しています。管理規約の定め方や実際の運営方法は各マンションによって異なるため、実際の対応にあたっては管理会社、必要に応じてマンション管理士等の専門家へ個別に確認してください。
最終確認日: 2026年7月12日

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