管理組合の教科書

区分所有者名簿の管理と個人情報保護|管理組合が確認するポイント

最終更新: 2026年7月9日

総会の招集通知を送る、緊急時に連絡を取る、賃貸に出している住戸の実質的な居住者を把握する——区分所有者名簿はマンション管理組合の運営に欠かせない台帳です。一方で氏名・住所・連絡先といった記載項目は個人情報保護法上の「個人情報」にあたり、管理組合も同法の規律を無視できません。名簿に何を載せ、誰が見られるようにし、どう更新していくか、実務上の整理ポイントをまとめます。

結論

区分所有者名簿は、総会招集・議決権行使・防災対応という管理組合の本来業務に必要な範囲で作成・保管し、管理規約や細則に「作成・閲覧・提供のルール」を明文化しておくことが実務上の要点です。2017年の個人情報保護法全面施行により取扱件数の少ない団体も対象になったため、管理組合であっても本人の同意なく第三者へ名簿を提供することは原則できません。管理会社への提供は委託契約に基づく取扱いとして整理し、所有者変更・賃貸開始時の届出制度を規約で定めて更新の抜け漏れを防ぐことが基本の運用になります。

名簿に何を記載するか

区分所有者名簿の記載項目に法律上の一律の定めはありませんが、実務では区分所有者の氏名・住所(連絡先住所と専有部住所が異なる場合は両方)・電話番号またはメールアドレス・専有部の部屋番号・議決権割合(専有面積割合など規約で定めた基準)を基本項目とする管理組合が多く見られます。加えて、住戸を賃貸に出している場合の賃借人(居住者)の氏名・連絡先を別欄で管理することもあります。区分所有者と実際の居住者が異なると、総会招集通知の送付先や緊急時の連絡先が食い違う原因になるため、この2つを混同しない名簿設計が実務上のポイントです。

個人情報保護法との関係

2017年の個人情報保護法全面施行前は、取り扱う個人情報が5,000件以下の小規模な事業者・団体は適用除外とされていましたが、この規定は廃止され、現在は取扱件数にかかわらず個人情報を事業活動に利用する団体は同法の対象になり得ます。管理組合が名簿を作成・保管して総会招集や連絡に利用する行為は、この「個人情報取扱事業者」としての活動にあたると解されるのが一般的な理解です。もっとも、区分所有者間で名簿を共有すること自体を一律に禁じる法律ではなく、利用目的の範囲内での適正な取扱いが求められるという整理です。個別の該当性判断が必要な場面では、専門家への確認が望まれます。

誰が名簿を閲覧できるか

理事会・理事長が運営上必要な範囲で名簿を閲覧・使用することは、総会招集や議決権集計という管理組合の本来業務に照らして通常想定される利用といえます。一方で、区分所有者本人が「他の組合員の連絡先を教えてほしい」と求めてきた場合の対応は管理組合によって分かれます。管理規約や細則に「名簿の閲覧は理事会が認めた目的に限る」「第三者への提供は本人の同意を得る」といった規定を置き、閲覧申請の窓口と判断基準をあらかじめ明文化しておくと、個別対応のたびに理事会が判断に迷う場面を減らせます。

管理会社への名簿提供の考え方

管理委託契約に基づき管理会社が名簿の作成・更新・保管業務を代行しているケースは多く、この場合の管理会社への名簿提供は、管理組合が自ら行う事務を委託先に行わせているだけと整理されるのが一般的です。個人情報保護法上も、委託に伴う提供は本人同意が別途必要な「第三者提供」には該当しないという理解が実務では広く採られています。ただし、管理会社が名簿を委託業務の範囲を超えて自社の営業活動などに利用することがないよう、管理委託契約書に個人情報の取扱いに関する条項(利用目的の限定、再委託時の扱い、契約終了時の返却・破棄)が入っているかを確認しておくことが望まれます。

所有者変更・賃貸開始時の更新ルール

名簿の情報が古いままだと、総会招集通知が旧所有者に届いてしまう、緊急連絡が取れないといった実務上の支障が生じます。多くの管理組合では、区分所有権の売買や賃貸を開始する際に「管理組合への届出」を管理規約・使用細則で義務付け、届出書の様式(新所有者・賃借人の氏名連絡先、契約日など)を用意しています。届出が任意にとどまっている場合は実際の更新が滞りやすいため、規約改正のタイミングで届出を明文の義務規定にできないか検討する管理組合もあります。仲介した不動産会社から管理会社へ連絡が入る運用を組み合わせている例も見られます。

防災対応との両立

地震などの災害発生時、安否確認や避難誘導のために名簿情報が必要になる場面がありますが、平常時のプライバシー保護の観点から名簿の閲覧を制限していると、いざという時に活用できないという課題が生じます。この両立のため、平常時は理事会限りで名簿を厳重に保管しつつ、災害時要配慮者(高齢者・障害のある方など)については本人の事前同意を得たうえで防災担当者にも共有する、といった段階的な運用を定めている管理組合もあります。名簿の防災目的での利用範囲をあらかじめ細則や防災計画に定めておくと、発災時に判断で迷う場面を減らせます。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: 区分所有者から他の組合員の名簿を見せてほしいと言われたら渡してよいですか。

A: 一律の正解はなく、管理規約・細則に閲覧ルールがあればそれに従います。定めがない場合は、目的を確認したうえで理事会として可否を判断し、今後のために規約への明文化を検討することが実務的な対応です。

Q: 賃借人(居住者)の情報も名簿に含める必要がありますか。

A: 法律上の一律の義務ではありませんが、緊急連絡や共用部利用ルールの周知の観点から、区分所有者欄とは別に賃借人欄を設けて管理している管理組合が多く見られます。

Q: 名簿はどのような形式・場所で保管すればよいですか。

A: 紙・電子データいずれの形式でも構いませんが、閲覧できる人を限定できる保管方法(施錠できる場所、パスワード管理された電子ファイルなど)を選び、管理会社に委託している場合は委託契約書の保管・管理条項も確認しておくとよいでしょう。

まとめ

区分所有者名簿は総会運営・議決権行使・防災対応に必要な基礎情報である一方、個人情報保護法の適用対象にもなり得ます。記載項目・閲覧できる人・管理会社への提供の位置づけ・所有者変更時の更新ルールを管理規約や細則であらかじめ明文化しておくことで、個別対応のたびに理事会が判断に迷う場面を減らし、名簿の鮮度も保ちやすくなります。

この記事について 本記事は、区分所有者名簿の管理・個人情報保護に関する一般的な考え方を紹介する目的で作成しています。個人情報保護法の該当性・具体的な運用は状況により異なるため、実際の対応にあたっては個人情報保護委員会の公表資料や弁護士等の専門家へ個別に確認してください。
最終確認日: 2026年7月9日

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