最終更新: 2026年7月13日
バルコニーや専有部での喫煙をめぐる苦情が続くと、「禁止するだけでなく、吸う場所を用意できないか」という声が理事会に上がることがあります。受動喫煙対策の流れの中で、共用部の屋外スペースに喫煙所を設ける管理組合も出てきていますが、設置場所の選び方を誤ると、今度は喫煙所の煙をめぐる新しいトラブルの火種になりかねません。バルコニー喫煙禁止とあわせて検討する場合の考え方、決議要件、設置場所選定の注意点を整理します。
共用部への喫煙所設置は、バルコニー・専有部の喫煙を禁止する規約改正とセットで検討されることが多いテーマです。2024年6月に改正されたマンション標準管理規約では、バルコニー等での喫煙(電子タバコ・加熱式タバコを含む)を禁止する条文例が示されましたが、禁止と同時に「では吸う場所をどうするか」という論点が残るため、屋外に区画を設ける、あるいは屋内に喫煙室を設ける形で対応を検討する管理組合があります。ただし、喫煙所を新設すること自体が敷地・共用部分の用途変更や新たな費用負担を伴うため、規約改正(特別決議)または使用細則の制定・変更(普通決議)のいずれで進めるか、設置場所が住戸の窓・玄関・避難経路から十分離れているか、受動喫煙防止のための措置(パーティション・換気等)が必要かを、着手前に整理しておくことが実務上の出発点になります。設置しない選択(禁止のみで対応する)も十分に成立する選択肢であり、必ず設置しなければならないものではありません。
健康増進法の改正(2020年4月全面施行)により、多数の人が利用する施設では受動喫煙防止の取り組みが求められる流れが強まりました。マンションの共用部も例外ではなく、共用廊下・エントランス・駐輪場などでの喫煙を禁止する使用細則を定める管理組合が増えています。あわせて、バルコニーでの喫煙についても、他の住戸への煙の流入を理由に規約で禁止する動きが広がっています。しかし、禁煙・禁煙エリアを増やすだけでは、喫煙する住民が行き場を失い、かえって共用部の死角や敷地境界付近での喫煙に流れてしまうケースもあります。そこで、「禁止」とあわせて「限定された場所でなら吸える場所を用意する」という発想で、共用部の屋外スペースに喫煙所を設ける検討が出てくるのが実務上の流れです。
国土交通省は2024年6月にマンション標準管理規約を改正し、バルコニー等での喫煙(電子タバコ・加熱式タバコを含む)が他の居住者に著しい迷惑を及ぼすおそれがあることや火災の原因になりうること、健康増進法の趣旨も踏まえ、これを禁止する旨を規約に規定することも考えられるという条文例を追加しました。標準管理規約はあくまでモデルであり、各マンションの規約に自動的に反映されるものではないため、実際に禁止規定を設けるには各管理組合が個別に規約改正の手続きを行う必要があります。この改正の存在自体が、「バルコニー喫煙を禁止するなら、共用部の喫煙所をどうするか」という論点を後押しする形になっています。
共用部への喫煙所設置を検討する際は、どの手続きで進めるかを最初に整理しておく必要があります。
喫煙所を設ける場合、場所の選定を誤ると新たなトラブルの原因になります。実務上、次のような点を確認しておくと後々の苦情を減らせます。
屋内に喫煙室を設ける場合は、改正健康増進法が求める技術的基準(たばこの煙の流出を防ぐための一定基準以上の換気風速の確保等)を満たす必要があり、屋外に区画を設ける場合よりも設備投資・維持費用が大きくなる傾向があります。
喫煙所の新設・維持にかかる費用(設置工事費、灰皿・消火設備、清掃費用)は、共用部分の設備として管理費・修繕積立金から支出するのが一般的な整理ですが、「吸わない住民の管理費で喫煙所を維持することへの納得感」は総会で議論になりやすい論点です。設置を検討する際は、費用の出どころとあわせて、利用者を区分所有者・居住者に限定するか、来客も利用可としてよいかといった運用ルールも決めておくと、後日の使用細則違反や近隣トラブルを防ぎやすくなります。
東京都をはじめ一部の自治体では、独自の受動喫煙防止条例が定められています。たとえば東京都受動喫煙防止条例では、2人以上が利用する施設について原則屋内禁煙とし、一定の技術的基準を満たした喫煙室を設置できない場合は禁煙とすることが求められています。共用部に喫煙室・喫煙所を設ける場合は、健康増進法だけでなく、所在地の自治体に受動喫煙防止条例があるかどうか、ある場合はその基準を満たしているかもあわせて確認する必要があります。
Q: バルコニーでの喫煙を禁止する代わりに、必ず共用部に喫煙所を設けなければなりませんか。
A: 設置は義務ではありません。禁止のみで対応し、喫煙所を設けない管理組合も多くあります。設置するかどうかは各マンションの判断です。
Q: 共用部に喫煙所を作る場合、決議要件はどう判断すればよいですか。
A: 敷地・共用部分の変更の規模や費用によって、普通決議で足りる場合と特別決議が必要な場合があります。判断に迷う場合はマンション管理士や管理会社に個別に確認することをおすすめします。
Q: 屋外に喫煙所を作れば、健康増進法上の基準を満たさなくてもよいですか。
A: 屋外の喫煙所であっても、受動喫煙を防止するための必要な措置を講じたうえで設置することが求められます。所在地の自治体に受動喫煙防止条例がある場合は、その基準もあわせて確認してください。
共用部への喫煙所設置は、バルコニー・専有部の喫煙禁止とセットで検討されることが多いテーマですが、設置は義務ではなく、禁止のみで対応する選択肢も十分に成立します。検討する場合は、規約改正か使用細則かの整理、設置場所の選定(住戸・避難経路・人の往来からの距離)、費用負担と運用ルール、自治体の受動喫煙防止条例の有無を、着手前に理事会で整理しておくことが実務上のポイントです。
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