最終更新: 2026年7月12日
理事会の運営方針に納得できない、輪番制の負担が重い、賃貸に出していて実質関与したくないといった理由から、区分所有者本人や理事会に「管理組合を脱退したい」という相談が寄せられることがあります。町内会・自治会は任意加入で脱退の自由が認められていますが、マンションの管理組合はこれとは法的な位置づけが異なる団体です。
区分所有法第3条により、区分所有者は意思表示や加入手続きの有無にかかわらず、当然に管理組合の構成員になるとされています。区分所有者である限り、一方的な意思表示による脱退は認められません(強制加入団体)。共用部分・敷地が全区分所有者の共有関係にあるため、一部の所有者だけが管理から離脱することは制度上想定されていないためです。管理組合の構成員でなくなる方法は、売却・贈与・相続放棄等によって区分所有権そのものを手放すことに限られます。管理費・修繕積立金の支払い義務(区分所有法第19条)は組合員資格と結びついているため、「脱退したい」という主張だけでは免れることはできません。
理事会の運営方針や修繕計画への不満、輪番制で回ってくる役員就任の負担、総会・理事会に出席する時間が取れない、区分所有権を投資目的で保有していて実質的に関与したくないなど、脱退を考える理由はさまざまです。理事会がこうした相談を受けたときにまず整理すべきなのは、区分所有者である限り管理組合そのものから抜けることはできないという法的な前提です。負担を軽減したいという要望であれば、脱退ではなく後述する役員辞退や委任状の活用など、別の対応策を案内することになります。
区分所有法第3条は「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」と定めています。この条文の「団体を構成し」という部分は、任意に「構成できる」という意味ではなく、区分所有者になった時点で当然に団体(管理組合)が構成されるという意味に解釈されています。マンションの区分所有権を取得すると、入会届の提出や意思表示の有無にかかわらず、自動的に管理組合の構成員になる仕組みです。
管理組合からの一方的な脱退が認められない理由は、共用部分・敷地が全区分所有者の共有関係にあることに由来します。区分所有法第3条が「全員で」団体を構成すると定めているとおり、共有関係にある財産の管理から一部の所有者だけが離脱することは、制度としてそもそも想定されていません。また、区分所有法第46条第1項により、管理規約は区分所有者だけでなく、その特定承継人(購入者・相続人など)にも効力が及ぶとされています。前の所有者が規約に同意していたかどうかにかかわらず、新たに区分所有権を取得した人にも規約の効力が及ぶ点は、当然加入の仕組みと表裏一体の関係にあります。
区分所有法第19条は「各共有者は、規約に別段の定めがない限り、その持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と定めています。管理費・修繕積立金の支払い義務は、区分所有権を取得した時点で発生する法律上の義務であり、組合員資格と一体のものです。「管理組合を脱退するので管理費は払わない」という主張は法的に通用しないという理解が一般的で、支払いを拒否し続ければ、通常の滞納対応と同じ手順(督促・少額訴訟等の法的手続き)が取られることになります。滞納対応の具体的な流れは、既存の滞納対応記事を参照してください。
管理組合の構成員でなくなる方法は、区分所有権そのものを手放すことに限られます。具体的には、住戸の売却・贈与のほか、相続の場面であれば相続放棄などが考えられます。売却した場合、旧所有者は組合員資格を失い、新たに区分所有権を取得した買主が入れ替わりで当然に組合員となります。なお、住戸を賃貸に出している場合、実際にそこに住んでいるのは賃借人(占有者)ですが、組合員資格を持つのはあくまで区分所有者(貸主)です。賃貸に出しても区分所有権を保有している限り、組合員資格・管理費支払い義務はそのまま続く点に注意が必要です。賃貸化に伴う総会運営への影響は、既存の賃貸化率上昇の記事も参考にしてください。
組合員資格そのものから抜けることはできませんが、負担を軽減する方法はいくつかあります。総会・理事会への出席は法律上の義務ではなく、欠席や委任状・議決権行使書の提出によって議決権を行使する運用も広く認められています。輪番制で回ってきた理事就任についても、辞退が一切認められないわけではなく、既存の理事を断る方法の記事で整理した手順に沿って対応することができます。管理組合の運営自体を管理会社や外部の専門家に委ねたい場合は、第三者管理方式(外部管理者管理方式)という選択肢もあります。あわせて、マンションの管理組合と町内会・自治会は法的な性質が異なる別の団体であり、後者は任意加入で脱退の自由が認められている点も、両者を混同しないために押さえておきたいポイントです。
Q: 理事会の運営方針に納得できないので脱退したいのですが、脱退届を出せば認められますか。
A: 区分所有者である限り、脱退届の提出だけで法的に組合員資格を失うことはできないという理解が一般的です。運営方針への不満は、総会での意見表明や役員選任を通じて反映していく形になります。
Q: 相続で区分所有権を取得しましたが、管理組合には入りたくありません。
A: 相続により区分所有権を取得すると、本人の意思にかかわらず管理組合の構成員になるという理解が一般的です。管理組合に加入したくない場合は、相続放棄や区分所有権の売却など、区分所有権そのものを手放す方法を検討することになります。
Q: 賃貸に出していて実質住んでいない場合も、総会や理事会に出席する必要がありますか。
A: 総会・理事会への出席自体は法律上の義務ではなく、欠席や委任状の提出によって議決権を行使する方法も認められています。ただし、区分所有者である限り組合員資格や管理費の支払い義務は続きます。
マンションの管理組合は、区分所有法第3条に基づき区分所有者が当然に構成員となる強制加入団体であり、任意加入の町内会・自治会とは法的な性質が異なります。共用部分・敷地の共有関係から、一部の所有者だけが管理から離脱することは制度上想定されておらず、脱退できる方法は売却・相続放棄等により区分所有権そのものを手放すことに限られます。管理費・修繕積立金の支払い義務も組合員資格と一体のものであり、脱退の意思表示だけでは免れません。負担を軽減したい場合は、脱退ではなく役員辞退や委任状の活用、第三者管理方式といった代替策を検討することをおすすめします。個別の事情に応じた判断は、管理会社やマンション管理士、弁護士等の専門家に相談しながら進めてください。
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