最終更新: 2026年7月10日
新築マンションの入居時や管理組合発足のタイミングで、近隣の町内会・自治会から「マンション全体で加入してほしい」と声をかけられることがあります。管理組合と町内会・自治会は目的も法的な位置づけも異なる別の団体であるため、この違いを理事会が理解しないまま自治会費を管理費と一括徴収していると、加入・脱退をめぐる住民間のトラブルに発展しやすいテーマです。
区分所有法に基づく管理組合と、地域住民が任意で構成する町内会・自治会は法的に別の団体です。管理組合が団体として自治会に加入し、防災活動など管理組合の業務と関連する範囲で管理費から自治会費相当額を支出すること自体は裁判例で目的の範囲内と判断された例がありますが、個々の区分所有者が自治会を脱退する自由は別途保障されるべきものとされ、脱退後も自治会費相当額を一律に徴収し続けることは不当利得と判断された裁判例もあります。管理組合として自治会費を一括徴収する場合は、徴収根拠・使途・脱退時の停止手続きを総会であらかじめ明確にしておくことが実務上のポイントです。
管理組合は区分所有法第3条に基づき、建物・敷地・附属施設の管理を目的として区分所有者全員で構成される団体です。一方、町内会・自治会は地域住民の親睦や防犯・防災、地域行事の運営などを目的とする任意団体であり、法的な設立根拠が異なります。マンションの管理組合と町内会・自治会は名称が並んで語られることが多く混同されがちですが、別組織であることを総会資料や住民説明であらかじめ明確にしておくと、加入・会費の話が出たときに整理しやすくなります。
管理組合が団体として自治会に加入し、管理費から自治会費相当額を支出できるかどうかが争われた東京高等裁判所令和5年5月17日判決では、防災活動や住環境向上のための行政への働きかけなどは管理組合の業務の範囲内にあたり、これに要する費用を管理費から支出して団体加入すること自体は管理組合の目的の範囲内と判断されました。一方で、納涼祭やバーベキュー大会といった地域住民の親睦を専ら目的とするイベント活動については、管理組合の目的の範囲外である疑いがあると指摘されています。ただし、自治会の活動の一部に目的の範囲外と疑われるものが含まれているとしても、それだけで団体加入そのものが目的の範囲外になるとは限らないともされました。この判決は個別の事案に基づく判断であり、すべてのマンションに同じ結論が当てはまるとは限らないため、実際に加入方針を検討する際は弁護士等の専門家に確認することをおすすめします。
自治会からの脱退の自由については、県営住宅の自治会が争われた最高裁判所平成17年4月26日判決が参考にされることが多く、強制加入団体でなく退会を制限する規定も設けていない自治会は、会員が一方的な意思表示によっていつでも退会できるとされています。前述の東京高裁令和5年判決でも、区分所有者が自治会を退会した後にも自治会費相当額を管理費と合わせて徴収し続けることは、実質的に退会の自由を制限することになるとして、退会後に徴収した自治会費相当額は管理組合の不当利得にあたると判断され、区分所有者への返還が命じられています。管理組合として自治会費を一括徴収している場合は、脱退の申し出があった際に速やかに徴収を停止できる手続きをあらかじめ整えておくことが、こうしたトラブルを避けるうえで実務上重要です。
利便性のため、自治会費を管理費と合わせて口座振替で一括徴収している管理組合もあります。この場合、①自治会費の徴収根拠(総会決議や細則の有無)、②徴収した会費の使途・自治会への引き渡し方法、③自治会を退会した区分所有者の会費徴収を停止する具体的な手続きの3点を、あらかじめ理事会で整理しておくことが望まれます。管理費会計と自治会費会計を帳簿上も明確に分けておくと、後年の会計監査や住民からの照会に対応しやすくなります。
「自治会を脱退したい」という申し出があった場合、上記の裁判例の考え方を踏まえると、管理組合が脱退そのものを拒否できる根拠は乏しいという理解が一般的です。理事会は脱退の意思を書面で確認したうえで、管理費と一括徴収している自治会費の徴収を停止する手続きを進め、あわせて自治会側にも脱退の事実を伝える運用をしている管理組合が多く見られます。脱退後もゴミ集積所の利用など地域インフラに関わる部分の扱いは自治会ごとに運用が異なるため、事前に自治会側と申し合わせを確認しておくと後のトラブルを防ぎやすくなります。
Q: 新築マンションの引き渡し時に「自治会加入は必須」と説明されました。断ることはできますか。
A: 自治会加入は一般的に任意とされており、加入を拒否すること自体は可能という理解が広く共有されています。ただし、契約書や重要事項説明の記載内容によって事情が異なる場合があるため、具体的な状況は弁護士等の専門家に確認することをおすすめします。
Q: 自治会費を払わない住民がいる場合、管理組合が代わりに立て替える必要はありますか。
A: 自治会費は自治会と会員個人の間の会費であり、管理組合が立て替える法的義務はないという理解が一般的です。管理組合が便宜上一括徴収を代行している場合でも、未払い分の扱いは自治会と本人の間で解決するのが基本的な整理です。
Q: 自治会の役員と管理組合の理事を兼任してもよいですか。
A: 法的に禁止されているわけではなく、実際に兼任しているケースも見られます。ただし、意思決定の場面で立場が混同しないよう、管理組合の総会・理事会と自治会の活動を区別して進行することが望ましいとされています。
マンション管理組合と町内会・自治会は法的に別の団体であり、加入するかどうかは管理組合ごとの任意の判断です。管理組合として団体加入し防災活動等に費用を充てること自体は目的の範囲内と判断された裁判例がある一方、区分所有者個人の脱退の自由は別途保障されるべきものとされ、脱退後の自治会費相当額の徴収継続は不当利得とされた裁判例もあります。自治会費を管理費と一括徴収している管理組合は、徴収根拠・使途・脱退時の手続きを総会であらかじめ整理しておくことが実務上の要点です。個別の脱退トラブルや規約への記載方法に迷う場合は、弁護士等の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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