最終更新: 2026年7月10日
理事のなり手不足に悩む管理組合の選択肢として、管理会社や外部の専門家が理事会に代わって管理者に就く「第三者管理方式(外部管理者管理方式)」の導入が広がっています。一方で、管理会社自身が管理者になる形態では自社やグループ会社への工事発注などで利益相反が生じやすく、2026年4月には区分所有法の改正でこの点への規制が強化されました。導入を検討する理事会が押さえておきたい仕組みとリスク、制度改正の内容を整理します。
第三者管理方式(外部管理者管理方式)は、管理会社や外部専門家が管理者(理事長に相当する立場)となり、理事会に代わって管理組合の意思決定を担う運営方式です。理事のなり手不足の解消策として広がる一方、管理会社自身が管理者になる場合は自社・グループ会社への工事発注等で利益相反が生じやすく、国土交通省の調査でも外部管理者方式を採る管理組合の多くで理事会が置かれておらず区分所有者による牽制が働きにくい実態が指摘されてきました。2026年4月1日に施行された改正区分所有法第77条の2により、管理者が特別な利害関係を持つ相手と取引を行う場合は区分所有者への事前説明が義務化されています。導入を検討する場合は、監事の設置や総会への定期報告など、管理者の業務執行を区分所有者側からチェックできる仕組みをセットで整えることが実務上の要点です。
区分所有法上、管理組合の管理者は理事長がその役割を兼ねるのが従来型の運営です。第三者管理方式(外部管理者管理方式)は、この管理者の役割を管理会社や弁護士・マンション管理士などの外部専門家が引き受ける方式です。理事会を残したまま外部専門家が理事長役として管理者になる「理事会併存型」と、理事会そのものを置かず管理者が単独で意思決定を行う「理事会廃止型」の大きく2パターンがあり、後者では区分所有者は総会で管理者を選任・監督する立場に限られます。
高齢化した区分所有者の増加や共働き世帯の増加により、輪番制で理事のなり手を確保できない管理組合が増えています。理事会の運営自体が負担になっている場合、管理者の役割を外部に委ねる第三者管理方式は有力な選択肢の一つです。ただし、理事のなり手不足への対応策としては、第三者管理方式のほかに輪番制の見直しや理事報酬の設定なども選択肢にあり、第三者管理方式はその中でも管理組合の意思決定権限を外部へ委ねる度合いが大きい選択肢である点を理解したうえで検討する必要があります。
第三者管理方式のうち、管理組合と管理委託契約を結んでいる管理会社自身が管理者に就任するケースでは、管理者としての立場と管理会社としての立場が同一人格に集中します。このため、大規模修繕工事や設備更新工事を発注する際、管理者(管理会社)が自社やグループ会社を発注先に選定する自己取引・利益相反取引が生じやすく、相見積もりが形だけになったり、工事金額の妥当性を区分所有者側が検証しにくくなったりするリスクが指摘されています。国土交通省が実施した調査でも、外部管理者方式を採用する管理組合の多くで理事会が置かれておらず、区分所有者が管理者の業務執行状況を日常的に確認できる体制が整っていない実態が確認されています。
老朽化マンションの管理・再生の円滑化等を目的とした区分所有法等の改正により、2026年4月1日から新設の第77条の2が施行されています。この規定により、管理者が自身または利害関係のある会社(親会社・子会社・グループ会社など)と工事発注等の取引を行う場合、あらかじめ区分所有者に対して取引の相手方との関係、取引の時期・内容、金額の内訳や算定根拠、他社から見積もりを取得したか(取得していない場合はその理由)などを説明する会を開くことが義務付けられました。緊急時などやむを得ない事情がある場合の例外規定も設けられていますが、原則として管理者による自己取引は事前説明を経ないと進められない仕組みになった点が今回の改正のポイントです。管理会社が管理者となっている管理組合は、自社の管理規約・契約が改正内容に沿っているか確認が必要です。
利益相反取引の事前説明が義務化されたとはいえ、区分所有者側に説明内容を検証する体制がなければ実効性は限られます。国土交通省が公表しているガイドラインでは、第三者管理方式を採用する場合に監事を設置し、管理者の業務執行や会計を区分所有者側の視点でチェックする体制を整えることが望ましいとされています。理事会を廃止した管理組合であっても、監事は理事会とは別に選任できるため、総会で監事を選任し、工事発注や会計処理について定期的な報告を求める運用にしておくと、管理者への牽制機能を持たせやすくなります。
第三者管理方式の導入を検討する場合、まず現在の管理会社が管理者を兼ねる形になるのか、管理会社とは別の外部専門家を管理者とするのかを整理します。管理会社自身が管理者になる案の場合は、上記の利益相反取引に関する説明義務がどのように運用されるか、監事設置の有無、工事発注時の相見積もり取得ルールを事前に管理規約・契約書上で確認しておくことが重要です。導入は管理規約の変更を伴うことが一般的なため、総会決議に向けて区分所有者への説明資料に、通常の管理会社委託方式との違いとメリット・デメリットの両方を明記しておくと、後々の合意形成がしやすくなります。
Q: 第三者管理方式を導入すると、区分所有者は総会にも出なくてよくなりますか。
A: 理事会を廃止した場合でも、管理者の選任・解任や予算・決算の承認など重要事項は総会決議が必要であり、区分所有者が総会に関与する場面はなくなりません。
Q: すでに第三者管理方式を導入している管理組合は、2026年4月の改正にあわせて何をすればよいですか。
A: 管理者による利益相反取引の事前説明の運用ルールが管理規約・契約に反映されているか、監事の設置状況を含めて確認することが基本的な対応になります。具体的な規約改正の要否は管理規約の現状によって異なるため、マンション管理士や弁護士等の専門家に確認することをおすすめします。
Q: 第三者管理方式から従来の理事会運営に戻すことはできますか。
A: 総会決議により管理規約を変更すれば理事会運営に戻すこと自体は可能という理解が一般的です。ただし移行の手順や経過措置は個別事情によって異なるため、専門家に相談しながら進めることが望まれます。
第三者管理方式(外部管理者管理方式)は理事のなり手不足への有力な対応策である一方、管理会社自身が管理者になる場合は利益相反が生じやすいという課題を抱えています。2026年4月1日施行の改正区分所有法第77条の2により管理者による自己取引の事前説明が義務化されましたが、区分所有者側が実効的にチェックするには監事設置などの監視体制もあわせて整える必要があります。導入を検討する管理組合は、メリットだけでなく監視体制の設計まで含めて総会で説明し、合意形成を進めることが実務上の要点です。
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