最終更新: 2026年7月15日
マンション管理組合の実務情報の多くは、土地を区分所有者が共有する「所有権マンション」を前提にしています。しかし都市部を中心に、土地は地主から借り、その上の建物だけを区分所有する「定期借地権付きマンション」も一定数存在します。定期借地権付きマンションは更新のない契約を基礎とするため、地代の支払い、修繕積立金・解体準備金の滞納リスク、期間満了時の建物解体、区分所有権の譲渡など、所有権マンションにはない論点が管理組合運営に生じます。実務上押さえておきたいポイントを整理します。
定期借地権付きマンションは、区分所有者が土地の所有権ではなく借地権(敷地利用権)を持つにとどまり、契約の更新がないため、定期借地契約の期間が満了すれば建物を解体し土地を更地で地主に返還しなければならない点が所有権マンションとの根本的な違いです。この構造から、管理組合運営には①地代を継続的に支払う必要がある、②期間満了が近づくと「もうすぐ解体するのに直す必要があるのか」という意見の対立から修繕積立金・解体準備金の滞納が生じやすい、③期間満了時の建物解体は本来区分所有者全員の合意が前提だが1人でも反対すると発注が滞りうるため管理規約に管理組合への委託を明記しておく対策が実務上有効、④区分所有権の譲渡では敷地利用権が地上権か賃借権かで地主の承諾要否が異なり前区分所有者の滞納地代等の承継関係も個別に確認が必要、という所有権マンションにはない特有の論点があります。自分のマンションが定期借地権付きかどうか、借地権の法的性質(地上権か賃借権か)、契約の残存期間は、管理規約と借地権設定契約書を確認しないと分からないため、不明な場合は管理会社・マンション管理士・弁護士に確認することが実務の出発点になります。
一般的な「所有権マンション」は、区分所有者が専有部分の所有権とともに、敷地の共有持分(敷地利用権)も併せ持ちます。これに対して定期借地権付きマンションは、区分所有者が専有部分の所有権を持つ一方、敷地については地主から借りる借地権(地上権または賃借権としての定期借地権)にとどまります。都市部の地価高騰対策として、土地取得費用を分譲価格に転嫁せずに済む点がメリットとされ、供給が増えている類型です。
借地権にはこのほか「普通借地権」もありますが、普通借地権は期間満了後も地主に正当事由がない限り更新され、居住を継続できるのに対し、定期借地権は更新が一切なく、契約期間の満了によって確定的に契約が終了する点が最大の違いです。定期借地権付きマンションは、区分所有法上の専有部分所有権に定期借地権が付随する形をとるため、区分所有者は原則として専有部分と敷地利用権を分離して処分することができません(区分所有法22条1項)。
定期借地権付きマンションでは、区分所有者は管理費・修繕積立金に加えて、地主に対する地代を継続的に負担します。地代の徴収・地主への支払いを管理組合が窓口として代行するか、各区分所有者が個別に地主と契約するかは物件ごとに異なるため、自分のマンションの方式を管理規約・重要事項説明書等で確認しておく必要があります。あわせて、契約期間満了時の建物解体費用に備える「解体準備金」を、修繕積立金とは別枠、または内訳を区分したうえで積み立てる運用が一般的です。
所有権マンションであれば、修繕積立金を払わない理由は乏しいのが通常ですが、定期借地権付きマンションでは期間満了が近づくにつれて特有の滞納リスクが生じるとされています。将来的に建物を解体して土地を返還することが確定しているため、「近いうちに解体する建物に、今さら高い費用をかけて修繕する必要があるのか」という意見が区分所有者の一部から出やすく、ある程度まとまった積立額があると「これ以上積み立てる合理的理由がない」として修繕積立金・解体準備金の支払いを止める区分所有者が現れる恐れがあると指摘されています。
この対策として、契約期間の後半に負担が偏らないよう、当初から余裕をもった積立計画を立て、早期に必要額を回収し切る設計が有効とされています。例えば契約期間が70年であれば、70年間分の修繕・解体に必要な総額を最初の60年間で回収できるように積立額を設定しておけば、最後の10年間は積立負担を不要・低額にでき、期間満了直前の滞納問題を予防しやすくなります。管理組合の役員に就任した際は、自分のマンションの修繕積立金・解体準備金の積立計画が、契約期間全体を見据えたものになっているかを確認しておくと安心です。
定期借地権付きマンションの区分所有権を譲渡・売却する場合、敷地利用権である定期借地権の法的性質によって地主の承諾要否が異なります。定期借地権が地上権であれば地主の承諾は原則不要とされる一方、賃借権である場合は民法612条1項により地主の承諾を得なければ、新しい区分所有者は借地権の譲受けを地主に主張できないとされています。承諾が必要な取引では、実務上、譲渡承諾料が売買価格の一定割合として求められることもあるとされ、資金計画に織り込んでおく必要があります。
また、前区分所有者が地代を滞納していた場合、その滞納債務自体は新区分所有者に承継されないとされていますが、地代の滞納は契約解除・地上権消滅請求の事由となり得るため、滞納の経緯によっては新区分所有者にとって思わぬリスクとなる可能性があります。一方で、定期借地権の設定時に地代を前払いしているケースでは、その前払い効果は新区分所有者に承継されると考えられており、譲渡人・譲受人のいずれの立場でも、承継される権利義務の内容を借地権設定契約書等で事前に確認しておくことが重要です。定期借地権は更新がない分、残存期間が短くなるほど住宅ローンの利用可否や売却のしやすさにも影響するとされ、この点も所有権マンションとの実務上の違いになります。
定期借地契約の期間が満了すると、地主との間で土地の買取りや契約の再合意が成立しない限り、建物を解体し土地を更地で返還する必要があります。この解体工事は、本来は借地権者である区分所有者全員が発注主体となるべきものですが、見積り金額への異論や工事業者選定をめぐる意見の相違などから、発注に同意しない区分所有者が1人でもいると、スムーズに発注できず土地の明け渡しが遅れ、地主に対する債務不履行となる恐れがあると指摘されています。
この問題への対策として、区分所有者全員で構成される管理組合を解体工事の発注主体と位置づけ、多数決による意思決定で工事を発注できるよう、管理規約に「区分所有者全員から管理組合へ敷地の原状回復とその費用の取扱い業務を委託する」旨を明確に規定しておく方法が考えられるとされています。ただし、この規約の効力についての解釈は分かれる部分もあるため、可能であれば分譲時点で区分所有者全員から個別に同意を得ておくことが望ましいとされています。自分のマンションの管理規約に、期間満了時の解体手続きに関する定めがあるかどうかを確認しておくことは、役員としての実務上重要なチェックポイントです。
地主が破産した場合や相続が発生した場合など、底地(借地の対象となっている土地そのもの)を管理組合側で購入したいというニーズが生じることがあります。ただし、法人化されていない管理組合は不動産登記の名義人になれないため、区分所有者全員の共有名義や理事長個人名義での登記が必要になりますが、いずれも区分所有者の変動や理事長の交替のたびに名義変更の手間が生じる課題があります。管理組合を法人化すれば管理組合法人名義での取得も考えられるとされていますが、区分所有法上の管理組合法人の目的(建物・敷地・附属設備の「管理」を行う団体)との関係を整理したうえでの対応になります。
底地購入を検討する場合、区分所有法には敷地購入そのものを直接定めた規定がないため、決議の法的拘束力を明確にする観点から、少なくとも規約変更と同水準の区分所有者・議決権の各4分の3以上の決議を経ることが実務上望ましいとされています。購入費用の捻出方法についても、あらかじめ管理規約に修繕積立金の資金使途として敷地購入費用を含める規定を置いておくなど、事前の制度設計が必要になります。
Q: 自分のマンションが定期借地権付きかどうかは、どこで確認できますか。
A: 購入時の重要事項説明書、管理規約の記載、登記事項証明書(敷地権の種類)で確認できます。判断が難しい場合は管理会社・マンション管理士に確認するのが確実です。
Q: 定期借地権の残存期間が短くなると、管理組合運営にどう影響しますか。
A: 残存期間が短くなるほど、修繕積立金・解体準備金の積立不足や滞納が問題化しやすく、また区分所有権の売却・住宅ローン利用のしやすさにも影響するとされています。積立計画の妥当性を定期的に見直すことが実務上重要です。
Q: 期間満了前に地主と再契約や土地の買取りで合意できれば、解体は避けられますか。
A: 地主等と土地の買取りや契約の再合意が成立すれば、解体・更地返還を避けられる可能性があります。ただし合意の成否は個別の交渉次第であり、管理組合として早期から地主との関係を維持し、期間満了に向けた協議を計画的に進めることが実務上望ましいとされています。
定期借地権付きマンションは、区分所有者が土地の所有権ではなく更新のない借地権を持つにとどまる点が所有権マンションとの根本的な違いです。この構造から、地代の継続負担、期間満了が近づくほど生じやすい修繕積立金・解体準備金の滞納リスク、期間満了時の建物解体における管理組合の位置づけ、区分所有権の譲渡における地主の承諾要否や滞納地代等の承継関係など、所有権マンションにはない実務上の論点が生じます。役員に就任した際はまず自分のマンションが定期借地権付きかどうか、借地権の法的性質と残存期間を確認し、不明な点は管理会社・マンション管理士・弁護士に相談することが実務の出発点になります。
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