管理組合の教科書

マンション修繕委員会へのなりすまし対策|役員の本人確認と標準管理規約改正のポイント

最終更新: 2026年7月12日

2025年5月、首都圏のマンションで、区分所有者ではない大規模修繕工事会社の社員が住民になりすまして修繕委員会に出席し、自社への発注に誘導しようとしていた事案が報道されました。この種の事案を踏まえ、国土交通省は2025年10月17日にマンション標準管理規約を改正し、役員・専門委員の就任時に本人確認を実施することの有効性を明記しました。なぜこうしたなりすましが起こり得るのか、管理組合として実務上どこを確認しておけばよいのかを整理します。

結論

大規模修繕は数千万円規模の工事費が動く一方、管理組合の役員には工事や業者選定の専門知識がある人ばかりではなく、区分所有者の数が多いマンションほど「誰が本当の区分所有者か」を全員が把握しきれていないという構造的な弱さがあります。今回報道された事案は、この弱さを突いて工事業者関係者が住民を装い、複数回にわたり修繕委員会に出席していたのに気づかれなかったというものでした。国土交通省はこれを受けてマンション標準管理規約を改正し、規約の解説(コメント)部分に役員・専門委員の就任時の本人確認が有効である旨を追加しています。ただし標準管理規約はあくまで国が示すモデル(ひな形)であり、それ自体に法的拘束力はありません。実際に自分の管理組合の規約に反映するには、総会で規約変更の決議(区分所有法上の特別決議)を経る必要があります。規約改正を待つかどうかにかかわらず、委員就任時の区分所有者名簿との照合や、日頃から住民同士が顔を合わせる機会をつくっておくことは、規約変更なしに始められる実務対応です。

報道された事案の概要

2025年5月に報じられた事案では、首都圏のマンションの大規模修繕工事において、区分所有者ではない工事施工会社の社員が住民であるかのように偽って修繕委員会の委員として複数回出席し、最終的に自社が受注できるよう誘導する動きをしていたとされています。他の委員はこの間、詐称に気づけなかったと伝えられています。大規模修繕の修繕委員会は、施工会社の選定や工事仕様の検討に直接関わる場であるため、ここに利害関係者が身元を隠して入り込むと、管理組合にとって不利な内容のまま話が進んでしまうおそれがあります。

なぜなりすましが起こり得るのか

標準管理規約改正の内容と位置づけ

国土交通省は、2026年4月1日施行の改正区分所有法にあわせて2025年10月17日にマンション標準管理規約を改正しました。この改正では、総会決議の多数決要件の見直しや所在等不明区分所有者への対応などとあわせて、規約本文に付随する「コメント」(解説部分)に、役員や専門委員の就任時に本人確認を適切に実施することが有効である旨が追加されています。ここで注意したいのは、標準管理規約はあくまで国土交通省が示すモデル・ひな形であり、それ自体が各マンションの規約に自動的に反映されるものではないという点です。自分の管理組合の規約に本人確認の考え方を取り入れるには、総会で規約変更の決議(区分所有法上、規約の変更は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別決議が原則)を経る必要があります。

管理組合が確認できる対策

これらの対策の多くは、規約変更を待たなくても理事会の運用として始められます。委員選任時に名簿照合を行う、出席者名簿を残すといった運用は、細則の追加や理事会決議のみで対応できる場合もあるため、まずは管理会社やマンション管理士に運用面での相談をすることが実務上の進め方になります。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: 標準管理規約が改正されたら、自分のマンションの規約も自動的に変わりますか。

A: 変わりません。標準管理規約はあくまで国土交通省が示すモデル・ひな形であり、法的拘束力はありません。自分の管理組合の規約に反映するには、総会で規約変更の決議(区分所有法上の特別決議)を経る必要があります。

Q: なりすましを防ぐために、規約変更をしなくても始められる対策はありますか。

A: 委員就任時に区分所有者名簿と照合したうえで身分証明書の提示を求めること、出席者名簿を作成して理事会・管理会社と共有することなどは、規約変更を経なくても理事会の運用として始められる対策として挙げられています。

Q: 大規模修繕の談合問題となりすましは同じ話ですか。

A: 別の問題です。なりすましは身元を偽って委員会に入り込む行為、談合は施工会社・コンサルタント間で価格や受注を事前調整する行為です。2026年6月には大規模修繕工事をめぐる価格談合で約40社が公正取引委員会から排除措置命令を受ける方針が報じられており、いずれも管理組合が別々に意識しておくべきリスクです。

まとめ

大規模修繕の修繕委員会に工事業者関係者が住民を装って入り込んだ事案をきっかけに、国土交通省はマンション標準管理規約の解説部分に役員・専門委員の本人確認の有効性を追加しました。標準管理規約自体に法的拘束力はなく、自分の管理組合に反映するには規約変更の決議が必要ですが、委員就任時の名簿照合や出席者名簿の作成といった運用面の対策は、規約変更を待たずに始められます。工事費が大きく動く大規模修繕の場面では特に、委員選任時の確認を意識しておくことが実務上の要点です。

この記事について 本記事は、修繕委員会等へのなりすまし事案と標準管理規約改正の考え方を紹介する目的で作成しています。個別の規約変更の要否・手続き、なりすましが疑われる際の対応は、管理会社・マンション管理士、必要に応じて弁護士等の専門家へ確認してください。
最終確認日: 2026年7月12日 / 参照: 国土交通省マンション標準管理規約改正(2025年10月17日公表)、改正区分所有法(2026年4月1日施行)

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