管理組合の教科書

専用使用権とは|バルコニー・専用庭・トランクルームの範囲と管理組合が確認するポイント

最終更新: 2026年7月10日

「バルコニーは共用部分なのに、なぜ自分の家のように専有物置きを置いてよいのか」「専用庭がある1階住戸だけ費用を払っているのはなぜか」——理事になって初めてこうした疑問を持つ方は少なくありません。専用使用権は、共用部分の中に例外的に区分所有者が排他的に使える範囲を設ける仕組みで、範囲・費用負担・修繕義務の切り分けを理事会が正しく理解していないと、住民説明やトラブル対応の場面でつまずきやすい実務テーマです。

結論

バルコニー・玄関扉・窓枠・窓ガラス・1階に面する専用庭・屋上テラスなどは、区分所有法上は共用部分でありながら、標準管理規約第14条に基づき特定の区分所有者だけが排他的に使用できる「専用使用権」の対象とされています。専用庭・トランクルーム・特定住戸専用駐車場のように付属住戸が限られる部分については、公平性の観点から管理組合に専用使用料を納入する扱いになっているのが一般的です。修繕義務の切り分けは標準管理規約第21条が基準で、清掃や網戸の張替えなど「通常の使用に伴う管理」は専用使用権者の負担、防水層の経年劣化修繕など「計画修繕」は管理組合の負担というのが基本的な考え方です。専用使用権の範囲・使用料・貸与の可否は管理規約・使用細則で定める事項であり、変更には総会決議が必要になるため、個別の解釈や規約変更を検討する場合は管理会社やマンション管理士に確認することをおすすめします。

専用使用権とは|共用部分なのに専用で使える理由

区分所有法上、バルコニーや玄関扉、窓枠・窓ガラスは、専有部分ではなく建物の構造を支える共用部分に分類されます。しかし、バルコニーは避難経路としての機能を持ちながら日常的には特定の住戸の生活動線の一部になっており、玄関扉や窓ガラスも実質的にはその住戸の居住者しか使わない部分です。こうした「共用部分だが実質的に特定の区分所有者しか使わない部分」について、規約で排他的な使用を認める権利が専用使用権です。国土交通省のマンション標準管理規約第14条は、別表でバルコニー・玄関扉・窓枠・窓ガラス・1階に面する庭・屋上テラス等を専用使用権の対象として例示しており、多くのマンションの管理規約もこれに準じた構成になっています。

専用使用権の対象になりやすい部分

専用使用権の対象は管理規約によって個別に定められるため、必ずしも全マンションで同じではありませんが、一般的に以下のような部分が対象とされています。

どの部分が専用使用権の対象になっているか、専用使用料が発生するかは管理規約・別表を確認しないと分からないため、理事に就任したらまず自マンションの管理規約の該当箇所を確認しておくことが実務上の第一歩です。

専用使用料の考え方|なぜ一部の住戸だけ費用を払うのか

バルコニーや玄関扉のように全住戸に等しく付属している部分については、専用使用料を徴収しないのが一般的です。一方、1階の専用庭や屋上テラス、特定位置の駐車場のように、付属する住戸が一部に限られる部分については、専用使用権を持たない住戸との公平性を確保する目的で、管理組合に専用使用料を納入する規定を設けているマンションが多く見られます。専用使用料は管理費や修繕積立金とは別枠で管理規約・使用細則に金額や算定方法を定めるのが一般的な扱いです。専用使用料の水準や徴収の有無は個々の管理規約によって異なるため、金額の見直しを検討する場合は、他の区分所有者との公平性・近隣相場・管理規約の変更手続きを踏まえて総会で議論する必要があります。

修繕義務の切り分け|通常の使用に伴う管理と計画修繕の境界線

専用使用権が絡む場面で理事会が最も悩みやすいのが、修繕費用をどちらが負担するかという境界線です。標準管理規約第21条は、共用部分の管理は管理組合の責任と負担で行うことを原則としつつ、専用使用権の対象となる部分の「通常の使用に伴う管理」については専用使用権者がその責任と負担で行うと定めています。この切り分けの目安は次のとおりです。

バルコニーからの雨漏りを例にすると、原因が防水層の経年劣化であれば大規模修繕工事等として管理組合が対応するのが一般的な扱いですが、個々の事案が「通常の使用に伴う損耗」なのか「経年劣化による計画修繕対象」なのかは、劣化の状況や発生原因によって判断が分かれることがあります。判断に迷う場合は、管理会社や建築士に現地確認を依頼したうえで整理することをおすすめします。

専用使用権の貸与・目的外使用を検討する場合の注意点

専用使用権は区分所有者本人に認められた権利であり、原則として第三者への転貸や、規約で定められた用途以外での使用は想定されていません。例えば専用庭を店舗の商品置き場として使う、駐車場の専用使用権を賃借人以外の第三者に又貸しするといった行為は、管理規約違反にあたる可能性があります。また、専用使用権付き駐車場の使用者を選定する際のルール(先着順・抽選・住戸優先順位等)や、退去・売却時の権利の承継・返還手続きについても、規約や使用細則に明記しておかないとトラブルの原因になりやすい点です。専用使用権の範囲・使用料・貸与ルールを変更する場合は、通常の規約変更と同様に総会の特別多数決議が必要になることが一般的なため、変更を検討する際は決議要件を事前に確認しておく必要があります。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: バルコニーに大型の物置や増設デッキを設置してもよいですか。

A: 専用使用権はあくまで使用を認める権利であり、共用部分である以上、避難経路の確保や建物の外観・構造への影響がある設置物については、使用細則で制限や事前承認のルールを定めているマンションが一般的です。設置を検討する場合は使用細則の確認と管理組合への事前相談をおすすめします。

Q: 専用庭の専用使用料を値上げすることはできますか。

A: 専用使用料の金額は管理規約・使用細則で定められている事項のため、変更するには総会の決議が必要です。近隣相場や他の区分所有者との公平性を踏まえて理事会で案を整理したうえで、総会に諮る流れになります。

Q: 専用使用権付き駐車場を退去時に第三者へ譲渡できますか。

A: 専用使用権は区分所有者本人に認められるものであり、第三者への譲渡は原則として想定されていません。売却・退去時の取り扱い(返還・次順位者への割り当て等)は管理規約・使用細則の定めに従うのが一般的です。

まとめ

専用使用権は、共用部分でありながら特定の区分所有者だけが排他的に使用できる範囲を定める仕組みで、バルコニー・玄関扉・窓枠・窓ガラスのように全住戸共通の部分と、専用庭・トランクルーム・専用駐車場のように付属住戸が限られ専用使用料が発生しやすい部分に大別されます。修繕義務は「通常の使用に伴う管理は専用使用権者、計画修繕は管理組合」という標準管理規約第21条の考え方が基本ですが、個別の事案では判断が分かれることもあるため、理事会は自マンションの管理規約・別表・使用細則を確認したうえで、疑義がある場合は管理会社やマンション管理士に相談することが実務上のポイントです。

この記事について 本記事は、専用使用権に関する一般的な考え方を紹介する目的で作成しています。専用使用権の対象範囲・専用使用料・修繕義務の切り分けは管理規約ごとに異なり、個別の事案の判断が分かれることもあるため、実際の検討にあたっては管理会社・マンション管理士等の専門家へ確認してください。
最終確認日: 2026年7月10日 / 参照: 国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)第14条・第21条

書式・テンプレートをすぐ使いたい方へ

理事会・総会・管理会社変更・修繕など実務で使えるWord書式10冊をまとめたセットをnoteで販売しています。

実務パック 全10冊セット(¥9,800・30%OFF)を見る

PR

管理組合の実務に役立つ書籍をAmazonで探す

Amazonで関連書籍を見る