管理組合の教科書

専有部分と共用部分の境界|具体例と修繕費負担の考え方

最終更新: 2026年6月28日

「玄関ドアは誰が直すのか」「バルコニーは自分のものか」——専有部分と共用部分の境界は管理組合でよく問題になります。具体例で整理しておくと実務がスムーズになります。

結論

専有部分は「住戸内部の区分所有者が単独使用する部分」、共用部分は「建物の躯体・設備など全員で共有する部分」です。玄関ドア・窓サッシ・バルコニーは共用部分とする管理規約が一般的で、修繕費は管理組合(修繕積立金)が負担します。ただし詳細は各マンションの管理規約で定められるため、規約を確認することが基本です。

判断に迷いやすい箇所の具体例

玄関ドア

玄関ドアは外観の統一性に関わる共用部分として扱われるのが一般的です。鍵シリンダーは専有部分とするケースもあります。ドアの色変更や交換は管理組合の許可が必要なことが多いため、勝手に変更しないよう注意が必要です。

実務で多い相談は、ドア本体の交換、塗装、鍵交換、ドアクローザーの不具合です。外側の色やデザインに関わる部分は建物全体の外観に影響するため、管理組合の承認を要する扱いになりやすいです。一方、鍵シリンダーや内側の補助錠は、居住者の防犯上の必要から個人負担で交換する運用もあります。どこまでを個人判断でできるかは、管理規約と使用細則で確認します。

窓サッシ・ガラス

窓サッシは外壁の一部として共用部分とされるのが一般的です。ガラスの交換も管理組合が対応するケースが多いですが、規約によって異なります。室内側のカーテン・ブラインドは専有部分です。

窓まわりでは、網戸、サッシ、ガラス、内窓、結露対策フィルムを分けて考えます。サッシや外部に面するガラスは共用部分として扱われることが多い一方、内窓やカーテンは専有部分の工事として扱われることがあります。断熱改修や防音工事をしたい場合は、個人で発注する前に、管理組合への申請が必要か、共用部分に穴あけや固定を行うかを確認します。

バルコニー

バルコニーは共用部分ですが、各住戸が「専用使用権」を持つという扱いが一般的です。日常的な清掃は居住者の責任ですが、床の防水工事などは管理組合(修繕積立金)が負担します。避難経路に物を置くことは禁止されています。

専用使用部分は「自分だけが使えるが、自由に改造できる場所ではない」と理解すると整理しやすくなります。物置、ウッドデッキ、人工芝、大型プランター、避難ハッチ周辺の荷物は、避難や防水層に影響することがあります。大規模修繕時にはバルコニー内の物を一時撤去する必要があるため、理事会は事前に撤去期限、残置物の扱い、住民への案内文を準備します。

配管・給排水管

縦管(建物全体の主配管)は共用部分、横引き管(各住戸への枝管)は専有部分とするケースが多いです。ただし専有部分内の横引き管でも、漏水が共用部分に影響する場合は管理組合が対応することもあります。詳細は規約で確認してください。

配管は境界判断が難しいため、図面、管理規約、過去の修繕履歴を合わせて確認します。床下や壁内を通る横引き管、メーターボックス内の設備、専有部から共用立管へ接続する部分は、マンションごとに扱いが異なります。漏水事故では、原因箇所、被害範囲、保険適用、緊急修理の承認者を分けて整理し、原因調査報告書と写真を保存します。

修繕費負担の基本的な考え方

共用部分の修繕

管理組合が修繕積立金から費用を負担します。区分所有者個人が勝手に修繕することは原則できません。

共用部分の修繕では、理事会で現地確認、見積取得、工事範囲、費用科目、住民周知を決めます。緊急性が低いものは理事会承認後に実施し、一定額を超える場合や規約上総会決議が必要な場合は総会議案にします。個人が先に業者へ依頼してしまうと、仕様や費用負担をめぐってトラブルになりやすいため、相談窓口を明確にしておくことが大切です。

専有部分の修繕

区分所有者が自己負担で行います。ただしリフォーム工事を行う際は管理組合への申請・承認が必要な場合があります。

専有部分の工事でも、騒音、搬入、共用廊下の養生、配管接続、床材変更など、他の住戸や共用部分に影響する項目があります。申請書には、工事内容、期間、施工会社、図面、使用材料、近隣挨拶の有無を添付してもらいます。特に床材変更や水回り移設は、下階への音や漏水に関係するため、管理規約・使用細則の基準を確認してから承認します。

費用負担で揉めそうな場合は、まず「場所」「原因」「誰の使用・管理に起因するか」「保険が使えるか」を切り分けます。共用部分か専有部分かの判断を急ぐより、現地写真、業者所見、図面、過去の同種対応を集めることが先です。理事会だけで判断が難しいときは、管理会社、専門業者、保険会社、必要に応じて専門家へ確認します。

理事会資料では、判断対象を「部位」「不具合内容」「規約上の扱い」「通常使用か過失か」「見積金額」「緊急性」に分けます。たとえば玄関ドアの開閉不良でも、ドア本体の劣化、鍵の不具合、居住者による改造、地震等による歪みでは扱いが変わります。同じ部位でも原因が違えば負担者が変わることがあるため、過去の対応例をそのまま当てはめないようにします。

よくある質問

Q:専有部分内の給湯器が壊れました。修繕費は自己負担ですか?

A:給湯器は専有部分の設備として、一般的に区分所有者の自己負担です。ただし給湯器に接続する配管の状況によっては管理組合に相談が必要な場合もあります。

Q:バルコニーにエアコンの室外機を置いてもよいですか?

A:多くのマンションでは一定のルールの範囲内で認められています。避難経路の確保・排水への配慮が必要で、管理規約や使用細則を確認してください。

Q:共用廊下の電球が切れています。誰が交換しますか?

A:共用廊下は共用部分のため、管理組合(または管理会社)が対応します。居住者個人が勝手に交換する必要はありません。管理会社または管理組合に連絡してください。

Q:専有部分か共用部分か分からないまま緊急修理が必要な場合は?

A:漏水や安全上の支障がある場合は、まず被害拡大を止める応急対応を優先します。その後、写真、業者所見、修理内容、費用を記録し、管理規約や保険の確認を行います。費用負担は応急対応後に整理することもあるため、事前に管理会社へ連絡し、記録を残すことが重要です。

まとめ

専有・共用の境界は「玄関ドア・窓・バルコニーは共用、室内設備は専有」が基本的な目安ですが、細部は管理規約と使用細則で変わります。理事会では、場所、原因、図面、過去の対応、保険の有無を確認し、個人負担か管理組合負担かを説明できる資料を残すことが重要です。判断に迷う場合は、管理会社や専門業者の所見を取り、必要に応じて専門家へ確認しましょう。

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