管理組合の教科書

マンションの暴力団排除条項(暴排条項)|標準管理規約第19条の2と規約への導入手順

最終更新: 2026年7月11日

2010年前後に全都道府県で暴力団排除条例が制定されたことを背景に、国土交通省は平成28年(2016年)の標準管理規約改正で「暴力団員の排除」に関する第19条の2を新設しました。ただしこの条項が対象にしているのは、区分所有者が専有部分を第三者に貸し出す場合の賃貸借契約であり、区分所有者本人が反社会的勢力に該当するケースまではカバーしていません。規約への導入手続きと、この条項でできること・できないことを整理します。

結論

標準管理規約第19条の2は、区分所有者が専有部分を賃貸に出す際の契約に、①相手方が暴力団員でないこと・契約後も暴力団員にならないことの確約、②相手方が暴力団員と判明した場合に区分所有者が無催告で解約できること、③区分所有者が解約権を行使しないときは管理組合が代理して解約権を行使できることの3点を定めるよう求める規定です。まだ規約に定めがない管理組合がこの条項を導入するには、区分所有法第31条に基づく規約変更として、総会での特別多数決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成)を経る必要があります。重要な限界として、この条項は賃借人(借主)を対象にしたものであり、区分所有者本人が反社会的勢力に該当する場合の排除は想定されていません。区分所有者本人への対応が必要な事態になった場合は、区分所有法第57条〜第60条の行為差止め・使用禁止請求・競売請求といった、より重い手続きで個別に検討することになります。

導入の背景|暴力団排除条例と標準管理規約の改正

2010年前後、全国の都道府県で暴力団排除条例が相次いで制定され、事業者が暴力団に利益を供与しないこと、暴力団を明示的に排除する契約条項を整備することが社会的に求められるようになりました。この流れを受けて、国土交通省は分譲マンションの標準管理規約(単棟型)を平成28年(2016年)に改正し、第19条の2として「暴力団員の排除」に関する規定を新設しました。標準管理規約はあくまで各管理組合が規約を作成・見直す際のひな形であり、そのままでは各マンションの規約に自動的に反映されるわけではありません。導入するかどうか、導入する場合の具体的な文言は、各管理組合が総会で決めることになります。また2021年6月の改正では、契約時に相手方から提出を受ける確約書について、電磁的方法による提供も認める内容が追加されています。

標準管理規約第19条の2の内容|貸与契約に定める3つの要素

第19条の2が想定しているのは、区分所有者が専有部分を第三者(賃借人)に貸し出す場面です。区分所有者は、貸与に係る契約に次の内容を定めなければならないとされています。第一に、契約の相手方が暴力団員ではないこと、および契約後において暴力団員にならないことを確約させること。第二に、契約の相手方が暴力団員であることが判明した場合には、区分所有者が何らの催告も要せずに当該契約を解約できるとすること。第三に、区分所有者がこの解約権を行使しないときは、管理組合が区分所有者に代理して解約権を行使できるとすることです。この第三の要素により、貸主である区分所有者が対応を怠った場合でも、管理組合側から契約解消に動ける仕組みになっている点が実務上の特徴です。

規約への導入手続き|特別決議と2026年4月施行の改正区分所有法

まだ第19条の2に相当する規定がない管理組合がこの条項を新たに導入する場合、区分所有法第31条に基づく規約の設定・変更・廃止として扱われ、総会での特別多数決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成)が必要です。手続きの流れは、理事会での条文案の検討(標準管理規約の規定例を土台にするのが一般的)、総会招集通知への議案掲載、総会での決議という順になります。2026年4月1日には改正区分所有法が施行され、集会の決議要件(議決権行使者の母数の考え方等)に変更が加わっているため、導入時期がこの前後にまたがる場合は、決議要件の適用関係を管理会社や専門家に確認しておくことをおすすめします。

区分所有者本人が該当する場合はどうなるか|第19条の2ではカバーされない領域

第19条の2は賃貸借契約の当事者(賃借人)を対象にした規定であり、区分所有者自身が反社会的勢力に該当する、あるいは専有部分を組事務所等の用途に使用しているといった事態までは想定していません。このような場合、管理組合が取り得る手段は、区分所有法第57条の行為停止等の請求(訴訟による差止め)、第58条の使用禁止の請求、第59条の区分所有権の競売の請求といった、より重い法的手続きに限られます。これらはいずれも訴訟を要し、要件も専有部分の使用方法が「共同の利益に反する」ことなど個別の立証が必要になるため、実務上は弁護士への相談が前提になります。規約に暴排条項を定めておくことは重要な備えですが、それだけで区分所有者本人由来のトラブルまで解決できるわけではない点を、理事会内で認識合わせしておくことが実務上のポイントです。

実務上の確認ポイント

誤解しやすい点

よくある質問

Q: うちのマンションの規約に暴排条項があるかどうか、どこで確認できますか。

A: 現行の管理規約の原本(第19条の2に相当する項目、または類似の名称の条文)を確認するのが確実です。規約に定めがない場合は、管理会社に相談のうえ、標準管理規約の規定例を参考に導入を検討することができます。

Q: 賃借人ではなく区分所有者本人が反社会的勢力に関係している疑いがある場合は、どう対応すればよいですか。

A: 第19条の2の枠組みでは対応できないため、区分所有法第57条〜第59条に基づく行為差止め・使用禁止請求・競売請求といった法的手続きの要否を、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。理事会だけで事実確認や交渉を進めることは避けてください。

Q: 暴排条項を新たに規約へ追加するには、どのくらいの賛成が必要ですか。

A: 規約の変更にあたるため、区分所有法第31条に基づき、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成による特別多数決議が必要です。2026年4月1日施行の改正区分所有法により決議要件の運用が一部変わっているため、導入時期が近い場合は事前に確認しておくと安心です。

まとめ

マンション標準管理規約第19条の2は、専有部分の賃貸借契約に暴力団排除の条項を組み込むための規定であり、貸主である区分所有者に確約書の取得と無催告解約権を持たせ、区分所有者が動かない場合には管理組合が代理で解約権を行使できる仕組みです。まだ規約に定めがない場合は特別多数決議を経て導入する必要があり、一方で区分所有者本人が反社会的勢力に該当する場合の対応は、この条項の対象外であり、区分所有法の行為差止め等のより重い手続きで個別に検討することになります。導入手続きと対応可能な範囲を切り分けて理解しておくことが、実務上の備えになります。

この記事について 本記事は、マンション標準管理規約第19条の2(暴力団員の排除)の一般的な内容と規約導入手続きを紹介する目的で作成しています。個別のトラブル対応・法的手続きの要否は物件ごとの事情によって異なるため、実際の対応にあたっては弁護士・マンション管理士等の専門家、および警察の暴力団対策担当部署や都道府県暴力追放運動推進センターへ確認してください。
最終確認日: 2026年7月11日 / 参照: 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第19条の2、同コメント

書式・テンプレートをすぐ使いたい方へ

理事会・総会・管理会社変更・修繕など実務で使えるWord書式10冊をまとめたセットをnoteで販売しています。

実務パック 全10冊セット(¥9,800・30%OFF)を見る

PR

管理組合の実務に役立つ書籍をAmazonで探す

Amazonで関連書籍を見る