最終更新: 2026年7月11日
消防設備の点検や防災訓練とは別に、消防法は一定規模以上の建物の管理権原者に対して「防火管理者」の選任と消防計画の届出を義務付けています。分譲マンションの場合、この選任義務は建物の規模ではなく居住者数(収容人員)を基準に判定されるため、規模の大きくないマンションでも対象になっているケースがあります。選任義務の基準・甲種乙種の区分・管理組合が負う責任・理事長交代時の実務を整理します。
消防法第8条により、収容人員が50人以上の分譲マンションは防火管理者を選任し、所轄消防署に消防計画とあわせて届け出る義務があります。収容人員は住戸の間取りに応じた想定居住者数の合計で算定するため、戸数がそれほど多くない中小規模のマンションでも基準を超えることがあります。延床面積500㎡未満なら乙種防火管理者(1日講習)、500㎡以上なら甲種防火管理者(2日講習)が必要です。分譲マンションでは、管理権原者(区分所有法上の管理者=多くの場合は理事長)が防火管理者を選任する立場にあり、理事長が交代するたびに防火管理者の選任・解任の扱いを確認し直す必要があります。実際に選任された防火管理者本人が理事長でなくても構いませんが、消防計画の作成・届出、選任解任の届出責任は最終的に管理組合(理事長)に帰属する点を理事会として認識しておくことが実務上のポイントです。
消防法第8条は、多数の者が出入り・勤務・居住する防火対象物の管理について権原を有する者(管理権原者)に対し、防火管理者を定めて防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けています。共同住宅(マンション)は「非特定防火対象物」に区分され、収容人員が50人以上になると選任義務の対象になります。収容人員とは、防火対象物に出入り・勤務・居住する者の数を消防法令の算定方法に基づいて数えた人数で、住戸ごとの想定居住者数の合計として算出されます。例えば3LDK中心の住戸が30戸あるマンションでは、1住戸あたりの想定居住者数を踏まえると収容人員が50人を超えることが多く、選任義務が生じる目安になります。実際の該当・非該当の判定や算定方法の細部は建物ごとに所轄消防署が確認する事項のため、自分のマンションが対象かどうかは管理会社または所轄消防署への確認が確実です。
共同住宅で防火管理者の選任が必要な場合、建物の延床面積によって甲種・乙種のどちらの資格が求められるかが分かれます。収容人員50人以上・延床面積500㎡未満であれば乙種防火対象物として乙種防火管理者、収容人員50人以上・延床面積500㎡以上であれば甲種防火対象物として甲種防火管理者の選任が必要です。乙種防火管理者の資格は1日間の講習、甲種防火管理者の資格は2日間の講習を修了することで取得できます。講習は日本防火・防災協会や各地の消防設備関連団体などが実施しており、管理組合の役員(理事長や防災担当理事)が受講して自ら防火管理者になるケースのほか、管理会社の担当者や外部の有資格者に委託するケースもあります。
防火管理者に選任された者は、火災の予防や発生時の被害軽減を目的とした消防計画を作成し、所轄消防署に届け出る義務を負います。消防計画には、自衛消防組織の編成、消火・通報・避難訓練の実施計画、消防用設備等の点検・維持管理、火気使用の監督体制などを定めます。分譲マンションでは、実際に消防計画を作成する実務は防火管理者(理事長本人または委託先の管理会社担当者)が担うことが多いものの、届出・選任にかかる最終的な責任は管理組合(区分所有法上の管理者である理事長)にあるとされています。理事会としては、消防計画の内容を「担当者に任せきり」にせず、年1回程度は内容を確認し、防災訓練の実施記録や消防用設備の点検報告と整合しているかを把握しておくことが望ましいといえます。
防火管理者を選任したとき、または防火管理者が交代・退任したときは、遅滞なく所轄消防署へ「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を提出する必要があります。分譲マンションで理事長(管理者)自身が防火管理者を兼ねている場合、理事の任期満了や役員改選で理事長が交代するたびに、防火管理者の選任・解任届出も連動して必要になる点が見落とされやすい実務ポイントです。前理事長が防火管理者のまま届出が更新されず、名目と実態が食い違っている状態が続いている管理組合も少なくないため、役員改選期の引き継ぎ事項に「防火管理者の選任状況の確認」を加えておくと管理漏れを防げます。管理会社に消防計画の作成・届出業務を委託している場合でも、選任・解任の届出自体は管理組合側の対応が必要になることが多いため、委託契約でどこまでをカバーしているか確認しておくと安心です。
Q: うちのマンションが防火管理者の選任義務の対象かどうか、どうやって確認すればよいですか。
A: 収容人員の算定は住戸の間取りに応じた想定居住者数の合計で行われ、個別の判断は所轄消防署が行います。管理会社に確認するか、所轄消防署へ直接問い合わせるのが確実です。過去に選任届を提出している場合は、その記録が管理組合の書類(重要事項に関する調書等)に残っていることもあります。
Q: 防火管理者は理事長が兼ねなければならないのですか。
A: 防火管理者の選任義務を負うのは管理権原者(理事長)ですが、実際に防火管理者になる人は理事長本人である必要はありません。管理組合の役員の中から選ぶことも、管理会社の担当者や外部の有資格者に委託することも可能です。ただし選任・解任の届出責任は管理組合側に残ります。
Q: 防火管理者の選任を怠っていた場合、どうなりますか。
A: 消防法上、選任義務があるにもかかわらず選任・届出を行っていない場合は罰則の対象となり得ます。まずは選任義務の対象かどうかを所轄消防署に確認し、対象であれば速やかに防火管理者の選任と消防計画の届出を進めることをおすすめします。
収容人員50人以上の分譲マンションは、消防法第8条に基づき防火管理者の選任と消防計画の届出が義務付けられており、建物の延床面積によって甲種・乙種の資格区分が分かれます。実務上の作成・届出は防火管理者本人や委託先が担うことが多い一方、選任・解任の届出責任は管理組合(理事長)に帰属するため、理事長交代のたびに防火管理者の選任状況を確認し直すことが実務上の抜け漏れ防止になります。消防用設備の点検・防災訓練の実施と合わせて、年1回程度は消防計画の内容を理事会で確認しておくと安心です。
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