最終更新: 2026年7月9日
大規模な地震や水害への備えとして、防災訓練の実施や共用部への備蓄品の設置を検討する管理組合が増えています。設備点検とは異なり、訓練や備蓄は「どこまでやるべきか」「費用は誰が負担するか」が管理組合ごとに幅があるテーマです。実施の目安と検討の進め方を整理します。
収容人員が一定規模以上のマンションは消防計画に基づく消火訓練・避難訓練の実施が消防法上求められますが、それ以外の防災対策(安否確認訓練や共用部の備蓄品整備)は管理組合の任意の取組みにとどまります。義務の有無にかかわらず、訓練の頻度と内容、備蓄品の数量と保管場所、費用の出所(管理費か修繕積立金か)の3点を総会前にあらかじめ理事会で決めておくと、住民説明がスムーズに進みます。
消防法では、収容人員が一定数以上の建物の管理権原者に対して防火管理者の選任と消防計画の作成を義務付けており、その消防計画に基づいて消火訓練・避難訓練を定期的に実施することが求められます。共同住宅(マンション)の場合、この防火管理者選任義務の対象となる収容人員の基準は建物ごとに所轄消防署が判断するため、自分のマンションが対象に該当するかどうかは、管理会社や所轄の消防署に確認するのが確実です。対象に該当しない小規模なマンションでも、訓練の実施自体を止める理由にはならず、任意の取組みとして続けている管理組合も多く見られます。
訓練の内容は、初期消火(消火器や屋内消火栓の取り扱い)、避難経路の確認、エレベーター停止時の階段避難、安否確認(インターホンや掲示板を使った在宅確認)など複数の要素に分けて考えると計画を立てやすくなります。全項目を一度に実施しようとすると住民の参加負担が大きくなるため、年1回は全項目を通した総合訓練、それ以外の年は避難経路確認や安否確認など一部項目に絞った簡易訓練にするなど、負担と実効性のバランスを理事会で検討する管理組合が多いです。訓練の実施結果(参加人数、気づいた点、改善事項)を記録に残しておくと、消防計画の見直しや次年度の訓練内容の検討に活用できます。
共用部への備蓄品は、飲料水・非常食・簡易トイレ・懐中電灯・救急用品などが基本項目になりますが、全戸分をまとめて備蓄するか、各戸で個別に備蓄する方針にするかで必要な数量は大きく変わります。管理組合として備蓄する場合は、想定する在宅避難日数(3日分を目安にする自治体の指針が多く見られます)と、備蓄対象を全居住者にするか帰宅困難時の一時滞在者向けの最小限にとどめるかを先に決めておくと、数量と保管スペースの検討が具体的になります。自治体によっては地域防災計画や防災の手引きでマンション向けの備蓄の考え方を示している場合があるため、所在自治体の防災担当窓口の資料も参考になります。
非常食や飲料水には消費期限があるため、購入時期を記録した一覧表を作り、期限が近づいたものから防災訓練時に配布・試食するなど入れ替える「ローリングストック」の仕組みを取り入れている管理組合もあります。保管場所は共用部の倉庫や防災備蓄庫を新設するケースが多く、既存の共用部の一部を備蓄庫に転用する場合や新たに防災倉庫を設置する場合は、共用部分の形状・用途の変更にあたることがあるため、工事の規模によっては総会決議が必要になる点を事前に確認しておく必要があります。
備蓄品の購入費用や防災訓練にかかる費用(消火器の点検実施費用を除く)を管理費から支出するか、修繕積立金から支出するかは、管理規約上の費目の考え方次第で管理組合ごとに扱いが分かれます。一般的には、日常的な防災用品の購入・更新は管理費、防災倉庫の新設など資本的な工事は修繕積立金または特別会計から支出する整理をする管理組合が多いですが、管理規約に明確な規定がない場合は、総会での予算承認を経て支出根拠を明確にしておくことがトラブル防止につながります。
Q: 防災訓練への参加は住民に義務付けられますか。
A: 区分所有者・居住者に訓練参加を法的に義務付ける規定は一般的ではありません。ただし、管理規約や使用細則に協力を求める条文を設けている管理組合もあるため、自分のマンションの規約を確認してみることをおすすめします。
Q: 備蓄品の購入は理事会決議だけで進められますか。
A: 少額の消耗品の購入であれば理事会決議の範囲で進めている管理組合が多く見られますが、防災倉庫の新設など高額な支出や共用部の変更を伴う場合は、総会決議が必要になることがあります。金額の目安は管理規約や過去の運用に沿って判断します。
Q: 賃貸で住んでいる居住者にも備蓄を呼びかけるべきですか。
A: 防災は所有者・賃借人を問わず在宅する全員に関わるため、掲示板や配布物での呼びかけを区分所有者・賃借人の区別なく行っている管理組合が一般的です。
マンションの防災訓練・備蓄品への対応は、消防計画上の訓練義務の有無を確認したうえで、訓練内容の範囲、備蓄品の想定日数と保管場所、費用の出所を理事会であらかじめ整理しておくことが実務の起点になります。防災倉庫の新設など共用部の変更を伴う検討では、消防署や管理会社、必要に応じて建築の専門家に個別に確認しながら進めることが実務上の要点です。
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