管理組合の教科書

マンションの特殊詐欺対策|宅配ボックス悪用の実例と管理組合ができる注意喚起・情報共有の進め方

最終更新: 2026年7月13日

特殊詐欺は「高齢の住民個人の問題」と考えられがちですが、集合住宅の宅配ボックスが被害金の受け渡しに悪用される事案や、オートロックの共連れ・なりすましで犯人が敷地内に侵入する手口が報告されており、マンションという建物・共用施設の構造そのものが悪用対象になり得ます。2025年の特殊詐欺被害統計、マンション特有の悪用パターン、管理組合が掲示・注意喚起・共用施設の運用面でできる対策を整理します。

結論

2025年の特殊詐欺の認知件数は27,832件(前年比32.3%増)、被害額は1,423億1,000万円(前年比98.0%増)といずれも過去最悪を更新し、65歳以上の高齢者被害が件数の51.3%・被害額の59.2%を占めています。マンションに関わる特有の悪用パターンとして、警察庁が2026年4月にマンション管理センターを通じて注意喚起した「宅配ボックスを被害金の受け渡し場所に使う手口」と、「管理会社の者」などと偽ってオートロックを開錠させる、または共連れで敷地内に侵入する手口があります。管理組合が直接できる対策は、個人を特定しない形での掲示板・回覧での注意喚起、宅配ボックスの防犯カメラ設置状況の確認、オートロック解錠時の声かけ・本人確認の徹底、管理会社を名乗る訪問者への確認方法の周知の4点が中心です。個別の被害相談・法的対応は警察・消費生活センターの領域であり、管理組合の役割は「気づきやすい環境をつくること」に限定されます。

特殊詐欺の被害実態(2025年)

警察庁の確定値によると、2025年(令和7年)の特殊詐欺の認知件数は27,832件で前年比32.3%増、被害額は1,423億1,000万円で前年比98.0%増となり、件数・被害額とも過去最悪を記録しました。1日あたりの被害額は約3億9,000万円、既遂事件1件あたりの被害額は523万6,000円で前年より173万円余り増加しています。

手口別では、警察官をかたって現金やキャッシュカードをだまし取る「ニセ警察詐欺」が11,014件と前年比で倍増し、被害額は1,005億円に達しました。また、65歳以上の高齢者被害は認知件数の51.3%、被害総額の59.2%を占めており、高齢の区分所有者・入居者が多いマンションほど注意が必要な状況です。

マンション特有の悪用パターン

宅配ボックスを被害金の受け渡し場所に使う手口

2026年4月、警察庁は「宅配ボックスを特殊詐欺に悪用される事案」についてマンション管理センターを通じて注意喚起を行いました。実際の事件では、指示役が集合住宅の宅配ボックスに報酬(数万円程度)を入れておき、暗証番号を秘匿性の高いアプリで「受け子」と共有し、受け子がボックスから報酬を回収したうえで、だまし取った現金を同じボックスに入れて指示役が回収するという、当事者同士が対面しない受け渡し方法が確認されています。狙われるのは防犯カメラが設置されておらず、部外者でも出入りできる人通りの少ない場所に置かれた宅配ボックスで、日本人グループによる被害だけでも2025年1〜9月の約9か月間で約40件・被害総額約1億1,200万円にのぼったと報じられています。

オートロックの共連れ・なりすまし

オートロック付きマンションでも、「管理会社の者です」「点検に来ました」などと偽って解錠させる、あるいは入居者の後ろにぴったりついて一緒に入る「共連れ」で敷地内に侵入する手口が報告されています。オートロックは万能の防犯設備ではなく、運用(住民の意識・声かけ)が伴わなければ効果が限定的になる点に注意が必要です。

管理組合ができる対策

個人情報保護の留意点

特殊詐欺の注意喚起は住民の安全に直結する重要な情報ですが、掲示・回覧の際は被害に遭った住民の氏名・部屋番号を特定できる情報を含めないよう注意が必要です。「〇号室で」ではなく「マンション内で」といった表現にとどめ、詳細な状況共有が必要な場合は、当該住民の同意を得たうえで理事会内にとどめるなど、区分所有者名簿の管理と同様に個人情報保護法の観点を踏まえた運用が求められます。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: 宅配ボックスの防犯カメラ設置は総会決議が必要ですか。

A: 既存の共用部分に新たに防犯カメラを設置する場合、規模や仕様によって普通決議・特別決議のいずれに該当するかが変わり得ます。管理会社・管理組合の顧問(マンション管理士等)に個別に確認することをおすすめします。

Q: 不審な電話・訪問があった場合、管理組合はどこに連絡すればよいですか。

A: 緊急性がある場合はまず警察(110番、または各都道府県警の相談窓口)に連絡し、管理会社にも状況を共有します。理事会内での報告・共有ルールをあらかじめ決めておくと対応がスムーズです。

Q: 高齢の区分所有者への個別の注意喚起は管理組合が行うべきですか。

A: 管理組合として個別訪問して注意喚起する義務はありませんが、掲示板・回覧での一般的な周知や、地域包括支援センター・自治会・警察の見守り活動との連携を案内することは実務上の対応として考えられます。

まとめ

2025年の特殊詐欺被害は件数・被害額とも過去最悪を更新し、高齢者被害が件数の半数以上・被害額の約6割を占めています。マンションでは宅配ボックスが被害金の受け渡し場所に悪用される事案や、オートロックの共連れ・なりすましによる侵入といった特有のリスクがあります。管理組合ができる対策は、個人情報に配慮した掲示板・回覧での注意喚起、宅配ボックス周辺の防犯カメラ設置状況の確認、オートロック解錠時の声かけ・本人確認の周知、不審者情報の共有ルールづくりです。個別の被害対応・法的手続きは警察・消費生活センターの領域であることを踏まえ、管理組合は「気づきやすい環境をつくること」に役割を絞って取り組むのが実務的です。

この記事について 本記事は、マンションにおける特殊詐欺対策の考え方を紹介する目的で作成しています。個別の被害相談・法的対応は警察・消費生活センターにご相談ください。防犯カメラ設置など共用部分の変更を検討する場合は、管理会社・マンション管理士に個別に確認してください。
最終確認日: 2026年7月13日 / 参照: 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ、警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」、公益財団法人マンション管理センター公表情報ほか公表情報

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