管理組合の教科書

マンションの点検商法・悪徳業者への注意|「無料点検」を装う訪問営業から住民・管理組合を守る方法

最終更新: 2026年7月12日

「近所で工事をしているので、ついでに点検します」「屋根が傷んでいるので無料で見ましょうか」——マンションの住戸や管理組合に対しても、こうした言葉で近づき、不安をあおって高額な契約を急がせる「点検商法」の被害が起きています。戸建てだけの問題と思われがちですが、専有部への訪問営業、理事長や管理組合への直接営業という2つの形でマンションにも及びます。ここでは典型的な手口、被害の実態、クーリング・オフの基本と管理組合契約特有の注意点、管理組合としてできる対応を整理します。

結論

点検商法は「無料点検」を入り口に不安をあおって即日契約を迫る手口で、国民生活センターの集計では屋根工事の点検商法に関する相談件数が2022年度に過去5年で最多となり、契約当事者の8割超を60歳以上が占めています。個人(居住者)が訪問販売で契約した場合は、特定商取引法に基づき法定書面を受け取った日を含めて8日以内であればクーリング・オフができますが、管理組合が法人として契約した場合は「営業のための契約」とみなされてクーリング・オフの対象外になり得る点に注意が必要です。この適用除外は契約の相手方が法人・団体だからといって一律に決まるものではなく、契約の実質(目的・内容・用途)で個別に判断されるため、疑わしい契約をしてしまった場合はあきらめずに消費生活センターへ相談することが実務上の基本です。管理組合としては、掲示による注意喚起、理事長・理事会への飛び込み営業に「その場で即答しない・複数見積りを必須にする」内規を設けておくことが、被害を防ぐ最も現実的な対策になります。

点検商法の典型的な手口

国民生活センターや警視庁が注意喚起している点検商法の典型的な流れは、次のようなものです。

  1. 「近所で工事をしている者です」「点検にうかがいました」などと言って、事前連絡なく訪問する
  2. 「無料で点検します」と持ちかけ、屋根裏や外壁、給湯器などを見せてもらう
  3. 点検後に「このままでは大変なことになる」「近隣に迷惑がかかる」などと不安をあおる
  4. 「今日契約すれば特別に値引きする」などとその場での契約を急がせる

実際には点検の必要がない、あるいは指摘された不具合が誇張・捏造されているケースも多く、契約後に高額な請求を受けてから疑問を持つ相談が後を絶ちません。

マンションで起こりやすい2つのパターン

点検商法は戸建て住宅を主な対象として語られることが多いですが、マンションでも次の2つの形で起こり得ます。

① 区分所有者・住民の専有部への訪問営業

オートロックのないマンションや、住民が解錠して招き入れてしまった場合、個々の住戸に対して給湯器・エアコン室外機・専有部の窓サッシなどの「点検」を装った訪問営業が行われることがあります。契約するのは区分所有者・居住者個人であり、管理組合が直接関与しない分、管理組合として被害の発生に気づきにくいという特徴があります。

② 管理組合・理事長への直接営業

もう一つのパターンは、共用部(外壁・屋根・給排水管など)の劣化を指摘し、理事長や管理会社の担当者に直接営業をかけてくるケースです。「今すぐ対応しないと資産価値が下がる」「大規模修繕の順番が来る前に応急処置が必要」などと迫り、理事会の正式な承認を経ないまま契約させようとする手口が見られます。理事長個人が対応窓口になりやすいマンションほど、この種の営業のターゲットになりやすい点に注意が必要です。

被害の実態

国民生活センターの集計によれば、屋根工事の点検商法に関する相談件数は2022年度に過去5年で最多となり、2018年度と比較して約3倍に増加しています。契約当事者の8割超を60歳以上の高齢者が占めており、判断に迷いやすい住民ほど被害に遭いやすい傾向がうかがえます。マンションの区分所有者にも高齢の単身居住者は少なくないため、管理組合として日頃から注意喚起をしておく意味は大きいといえます。

クーリング・オフの基本と管理組合契約特有の注意点

訪問販売でその場の勢いに任せて契約してしまった場合でも、特定商取引法に定める要件を満たす取引であれば、法定の契約書面(または申込書面)を受け取った日を含めて8日以内であればクーリング・オフによって契約を解除できます。書面に不備がある場合は8日を過ぎていてもクーリング・オフができる余地があるため、期間が過ぎたからとあきらめる前に消費生活センターへ相談することが基本です。

一方で、管理組合(管理組合法人を含む)が法人・団体として契約した場合は注意が必要です。特定商取引法は「営業のためにもしくは営業として締結する契約」を適用除外としており、管理組合が事業者として結ぶ契約はこれに該当し得るため、クーリング・オフの対象外とされるおそれがあります。ただし、この適用除外は契約の相手方が法人・団体であることだけで一律に決まるものではなく、契約の目的・内容・実態に即して個別に判断されるとされています。管理組合契約だからとあきらめず、疑わしい契約をしてしまった場合はまず最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン「188」)に相談することをおすすめします。

管理組合としてできる対応

被害を未然に防ぐために、管理組合として次のような対応を整えておくと実効性が高まります。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: 訪問してきた業者が本当に点検が必要だと言っている場合、その場で契約してよいですか。

A: その場での即決は避け、複数社から見積もりを取ることをおすすめします。共用部に関わる内容であれば、区分所有者個人ではなく理事会・管理会社を通じて対応することが基本です。

Q: すでに契約書に署名してしまいました。どうすればよいですか。

A: 契約からの日数にかかわらず、まず消費生活センター(消費者ホットライン「188」)に相談してください。訪問販売に該当し法定書面を受け取った日を含めて8日以内であればクーリング・オフができます。管理組合として契約した場合や期間が過ぎている場合でも、書面の不備や契約の実態によって対応できる余地があります。

Q: 管理組合として注意喚起をする際、どのような掲示が有効ですか。

A: 「点検を装った訪問営業には安易に応じない」「共用部の修繕は必ず理事会・管理会社を通す」という2点を明記した掲示を、エントランス等の目につく場所に常設することが有効です。あわせて、実際に相談を受けた際の理事会・管理会社への連絡先を明記しておくと、住民が相談しやすくなります。

まとめ

点検商法は「無料点検」を入口に不安をあおって契約を急がせる手口で、マンションでも専有部への訪問営業と管理組合・理事長への直接営業という2つの形で被害が起こり得ます。訪問販売として契約した個人は法定書面受領日を含め8日以内のクーリング・オフが可能ですが、管理組合が法人として契約した場合は適用除外になり得るため、日頃からの注意喚起と「その場で即決しない・複数見積りを必須にする」内規づくりが実務上の基本的な備えになります。疑わしい契約をしてしまった場合は、あきらめずに消費生活センターへ早めに相談してください。

この記事について 本記事は、点検商法・訪問販売に関する一般的な注意喚起を目的としています。個別の契約解除の可否やクーリング・オフの適用については契約書面の内容・取引の実態により判断が異なるため、消費生活センター(消費者ホットライン「188」)や弁護士等の専門家にご確認ください。本サイトは特定の事業者・工事業者を推奨・非難するものではありません。
最終確認日: 2026年7月12日 / 参照: 国民生活センター、警視庁、消費者庁「特定商取引法ガイド」

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