最終更新: 2026年7月9日
1981年(昭和56年)5月31日以前の建築確認で建てられたマンションは「旧耐震基準」の建物にあたります。旧耐震基準そのものが直ちに危険というわけではありませんが、購入・売却や大規模修繕のタイミングで耐震診断・耐震改修の要否を理事会が問われる場面が増えています。一般的な進め方を整理します。
耐震診断を実施するかどうかは、まず「自分のマンションの建築確認日がいつか」を確認することから始まります。旧耐震基準に該当する場合は、耐震診断の実施自体は多くの管理規約で理事会決議または総会の普通決議で進められますが、その先の耐震改修工事は内容によって必要な決議要件が変わるため、診断結果が出た段階で管理会社や設計事務所を交えて決議方法を確認する進め方が実務的です。
建築基準法の耐震基準は1981年6月1日に大きく改正され、それ以降の建築確認による建物が「新耐震基準」、それより前の建築確認による建物が「旧耐震基準」と呼ばれます。着工年ではなく建築確認を受けた日が基準になるため、竣工年だけで判断せず、建物の確認済証や検査済証、登記簿の新築年月日などで確認するのが確実です。書類が見当たらない場合は、分譲時の重要事項説明書の写しが管理組合に保管されていないか確認するか、建築確認台帳を保管する特定行政庁(市区町村の建築指導課等)に照会する方法もあります。
耐震改修促進法では、不特定多数が利用する大規模な建築物など一定の要件に該当する「要安全確認計画記載建築物」等について耐震診断とその報告が義務付けられていますが、一般的な分譲マンション(区分所有建物)の多くはこの義務の対象外で、耐震診断の実施は努力義務にとどまります。ただし、自治体によっては旧耐震のマンションを対象に、耐震診断・改修を促す独自の指導や助成制度を設けているため、義務の有無にかかわらず所在自治体の建築指導課に一度確認しておくと状況を把握しやすくなります。
耐震診断そのものは建物の現状を調べる調査行為であり、多くの管理組合では管理規約の「保存行為」や「共用部分の管理」の枠組みで、理事会決議または総会の普通決議(過半数)で進められます。一方、診断の結果を受けて実施する耐震改修工事は、外壁に耐震ブレースを増設するなど建物の形状や外観に大きな変更を伴う場合、区分所有法上の「共用部分の重大変更」に該当し、原則として区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別多数決議が必要になります。
耐震改修促進法には、一定の認定を受けた耐震改修工事について決議要件を緩和する特例の枠組みがありますが、適用条件や対象工事の範囲は個別の建物ごとに判断が分かれるため、特例の利用を検討する場合は自治体の窓口や区分所有法に詳しい専門家に個別に確認することが必要です。決議方法を誤ると総会が無効になるおそれがあるため、工事内容が固まった段階で管理規約と改修計画を照らし合わせ、必要な決議要件を事前に確定させておくことが実務上重要です。
耐震診断の費用は建物の規模・構造・調査の精度によって幅がありますが、簡易診断より詳細な診断のほうが費用は高くなる傾向があります。耐震改修工事の費用は、工法や規模により大規模修繕工事に匹敵する金額になることも珍しくありません。多くの自治体では旧耐震マンションを対象に、耐震診断費用の一部補助や耐震改修工事費用への補助・利子補給制度を設けており、募集期間や予算上限が決まっている場合が多いため、検討段階の早い時期に所在自治体の担当窓口へ確認しておくと資金計画を立てやすくなります。
Q: 耐震診断の結果が悪くても、改修工事をしないという選択はできますか。
A: 制度上は可能です。ただし、売買時の重要事項説明で耐震診断の実施状況や結果の説明が求められる場合があり、資産価値や売却のしやすさに影響することがあるため、総会で結果と対応方針を丁寧に共有しておくことが望まれます。
Q: 新耐震基準のマンションでも耐震診断は必要ですか。
A: 新耐震基準は旧耐震基準より耐震性能の水準が高いとされていますが、経年劣化や設計内容によって個別に状況は異なります。不安がある場合は、専門家に個別に相談することが基本です。
Q: 耐震診断だけを先に実施し、改修は数年後に判断することはできますか。
A: 一般的にはよく行われる進め方です。診断結果と概算費用を把握したうえで、長期修繕計画の見直し時期にあわせて改修の要否を判断する管理組合が多く見られます。
旧耐震マンションの耐震診断・耐震改修は、建築確認日の確認から始まり、決議要件の確認、自治体補助金の活用、総会での資金計画の共有まで段階的に進める実務です。耐震診断の実施自体は比較的着手しやすい一方、改修工事は決議要件や費用規模が大きく変わるため、診断結果が出た段階で管理会社・設計事務所・必要に応じて区分所有法に詳しい専門家を交えて、個別の建物に即した進め方を確認することが実務上の要点になります。
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