最終更新: 2026年7月10日
区分所有者が亡くなると、管理組合の実務は思わぬところで止まります。管理費の請求先を誰にすればよいか、総会の招集通知は誰宛てに送ればよいか、議決権は誰が行使できるのか——相続登記や遺産分割協議が終わるまでの間、こうした宙づり状態が数ヶ月から数年続くことも珍しくありません。理事会が直面しやすい実務対応の考え方を整理します。
区分所有者の死亡後、区分所有権は相続人に承継され、相続登記や遺産分割協議が完了するまでは相続人全員が共有する状態になるのが一般的な理解です。管理組合としては、相続手続きの完了を待たずに「管理費等の請求は相続人全員に対して行うことができる」「総会の議決権行使は相続人代表者を定めて一本化してもらう」という2点を実務の基本線として押さえておくと、宙づり状態でも運営を止めずに済みます。相続人の特定や遺産分割の内容そのものに管理組合が立ち入って判断することはできないため、個別の権利関係が問題になる場面は司法書士・弁護士など専門家への相談を案内する整理が実務的です。
区分所有者が亡くなると、その専有部分・共用部分の共有持分は相続人に承継されます。相続人が複数いる場合、遺産分割協議が成立するまでは相続人全員の共有(遺産共有)の状態にあるとされるのが一般的な理解です。区分所有権の名義(登記)を実際に変更するには相続登記の手続きが必要ですが、相続人間の話し合いが長引いたり、相続人の一部と連絡が取れなかったりすると、登記が数ヶ月〜数年にわたって未了のままになるケースもあります。管理組合の名簿・宛先情報の更新は、この登記の完了を待たずに進めざるを得ない場面が多くなります。
管理費等の請求先について、区分所有権が相続人全員の共有状態にある間は、相続人全員が管理費等の支払義務を連帯して負うと整理するのが実務上の一般的な考え方です。相続人のうち特定の1人だけに全額を請求してよいか、法定相続分に応じて按分すべきかは事案によって扱いが分かれ得るため、金額が大きい滞納が発生している場合や相続人間で対応が割れている場合は、管理組合として一方的に判断せず、顧問弁護士や管理会社を通じて確認しながら進めることが望まれます。当面の実務対応としては、判明している相続人の代表者(喪主を務めた人など)に連絡を取り、管理費等の支払い方法について合意を得ることから始める管理組合が多く見られます。
専有部分が相続人の共有になっている間、総会での議決権行使は「共有者は議決権を行使すべき者1人を定めなければならない」という区分所有法の共有者の議決権行使に関する考え方に沿って整理するのが一般的です。管理組合としては、相続人が複数いることが判明した時点で「議決権行使者を1人定めて書面で届け出てほしい」と案内し、届出がないまま総会当日を迎えた場合の扱い(棄権扱いとするか、代表者と目される人に確認するか)を理事会であらかじめ整理しておくと、当日の混乱を減らせます。管理規約・使用細則に共有者の議決権行使に関する条項がある場合は、その規定に従います。
相続登記が未了の間も、総会招集通知や管理費の請求書を送る宛先は必要です。多くの管理組合では、相続人代表者から「今後の連絡先」の届出を受け、名簿上は「(被相続人名)相続人代表 ○○様」といった形で暫定的に宛先を更新し、相続登記完了後に正式な名義変更届を提出してもらう、という2段階の運用をとっています。暫定的な宛先すら不明な場合は、次に述べる相続人不明・所有者不明のケースの対応に準じることになります。
相続人の所在が分からない、相続放棄をした相続人しかいない、といったケースでは、管理費等の滞納が長期化しやすくなります。この場合、専有部分の競売や不在者財産管理人・相続財産清算人の選任申立てなど、裁判所を通じた手続きが必要になる場面もありますが、いずれも管理組合単独で判断・実行できる範囲を超えるため、早い段階で弁護士に相談し、滞納が積み上がる前に方針を固めておくことが実務上重要です。「相続人が見つかるまで様子を見る」対応を続けると、滞納額が回収困難な規模まで膨らむリスクがある点は、理事会内で共有しておきたい注意点です。
Q: 区分所有者の死亡を管理組合はどうやって把握すればよいですか。
A: 同居していた家族や管理会社経由の連絡、掲示板・郵便物の状況などから把握するケースが多く、法律上「死亡を管理組合に届け出る義務」が区分所有者側に一律に課されているわけではありません。管理規約・使用細則に届出制度を設けている管理組合もあります。
Q: 相続人が複数いて全員の連絡先が分からない場合、総会招集通知はどうすればよいですか。
A: 判明している相続人(多くは同居家族や近親者)に連絡し、他の相続人への周知や議決権行使者の届出を依頼するところから始めるのが実務的な対応です。全く連絡が取れない場合の扱いは、管理規約の通知規定や専門家への相談を踏まえて判断することになります。
Q: 相続放棄がされた場合、区分所有権や管理費の扱いはどうなりますか。
A: 相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとして扱われるため、他の相続人または次順位の相続人に権利義務が移ります。相続人全員が放棄した場合は相続財産清算人の選任など裁判所の手続きが関わる専門的な領域になるため、早めに弁護士へ相談することが望まれます。
区分所有者の死亡は、管理費の請求先・議決権行使者・名簿の宛先という3つの実務を同時に宙づりにします。相続登記や遺産分割協議の完了を待たずに「相続人全員への請求」「議決権行使者の届出依頼」「暫定的な宛先更新」という基本線で対応を進め、相続人不明・長期滞納など個別の権利関係が絡む場面では早めに専門家へつなぐことが、理事会の負担を抑える実務上のポイントです。
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