最終更新: 2026年7月9日
高圧一括受電とは、マンション1棟分の電気をまとめて高圧で受電し、共用部・専有部それぞれの区分所有者に供給する仕組みです。電気料金の削減策として提案を受ける管理組合が増えていますが、専有部の契約にも関わる仕組みのため、導入前に理解しておきたい論点を整理します。
高圧一括受電は、共用部だけでなく各住戸の専有部電気契約も一括契約事業者に切り替える仕組みのため、導入には区分所有者「全戸」の個別同意が実務上必要になるのが最大の特徴です。共用部の電気代削減であれば管理組合の意思決定だけで完結する話ですが、高圧一括受電は住戸単位の契約変更を伴うため、総会決議とは別に、住戸ごとの同意書取得という手間のかかる合意形成プロセスが避けられません。
通常、マンションの各住戸は各区分所有者が個別に電力会社と低圧契約を結び、共用部(廊下灯・エレベーター・ポンプ等)は管理組合が別途契約しています。高圧一括受電は、マンション全体を1つの高圧契約にまとめ、一括受電事業者(電力会社本体ではなく、一括受電を専門に扱う事業者であることが一般的)が高圧で電気を受け、建物内の変電設備で低圧に変換して各住戸・共用部に供給する仕組みです。高圧契約は低圧契約より単価が下がる仕組みを利用してコストを削減する発想がベースにあります。
削減効果は建物の規模・築年数・既存契約の内容によって幅があり、一律の数字を保証できるものではありません。一括受電事業者が示す削減率の試算はあくまで見込みであり、実際の削減額は各住戸の電気使用量や契約アンペア数によって変動します。検討する際は、事業者の試算をそのまま採用するのではなく、複数事業者から見積もりを取り、共用部・専有部それぞれの削減見込みを分けて確認することが実務的です。
高圧一括受電に切り替えると、各区分所有者はそれまで個別に契約していた電力会社との契約を解約し、一括受電事業者との契約に切り替えることになります。専有部の電気契約は各区分所有者個人の契約であり、管理組合の総会決議だけで一律に切り替えることはできません。実務上は、総会で建物として一括受電を導入する方針を決議したうえで、各住戸から個別の同意書を取得し、原則として全戸の同意が揃った段階で切替工事に進む流れになります。賃貸に出している住戸がある場合は、所有者だけでなく入居者側の在宅立会いが必要になる場面もあるため、同意取得と切替日程の調整に時間がかかりやすい点はあらかじめ想定しておくとよいでしょう。
個別契約から一括受電に切り替える工事では、建物全体の受変電設備を新設・切替するため、数時間程度の建物全体の停電が発生するのが一般的です。停電時間帯はエレベーター・給水ポンプ・オートロックなど共用設備も止まるため、断水を伴う場合があること、高齢の居住者や在宅医療機器を使用する住戸への事前周知が必要になることを、切替日程を決める段階で理事会が把握しておく必要があります。
高圧一括受電の契約は、受変電設備の設置費用を一括受電事業者が負担し、長期の電力供給契約で回収する仕組みが一般的なため、契約期間が10年前後と長期に設定され、途中解約に違約金が発生する契約が多く見られます。契約書を確認する際は、契約期間・自動更新の有無・途中解約時の違約金の算定方法・設備の所有権(契約終了後に設備をどう扱うか)を必ず個別に確認し、内容に不明点があれば契約前に電気事業に詳しい専門家へ相談することが望まれます。
Q: 一部の住戸が同意しない場合、高圧一括受電は導入できませんか。
A: 一括受電事業者によって運用は異なりますが、全戸同意を前提とする事業者が多いのが実情です。同意しない住戸を除いた部分導入に対応する事業者もあるため、検討段階で複数事業者に個別に確認することが必要です。
Q: 契約期間の途中で管理組合の判断だけで解約できますか。
A: 一般的には各区分所有者との契約解除も伴うため、管理組合の判断だけで一律に解約することは難しく、違約金の負担が生じる契約が多く見られます。契約前に解約条件を必ず確認しておくことが重要です。
Q: 太陽光発電や蓄電池の導入とあわせて検討すべきですか。
A: 建物の電気設備計画をまとめて見直す機会にはなりますが、高圧一括受電と自家発電設備の導入は別の検討事項です。それぞれの費用対効果を分けて試算し、個別に専門家へ相談することをおすすめします。
高圧一括受電は電気料金の削減が期待できる仕組みですが、専有部の契約変更を伴うため全戸同意の取得という合意形成の負担が大きく、契約期間も長期にわたります。理事会だけで判断せず、複数事業者からの見積もり比較、契約条件の確認、切替時の停電への事前周知まで含めて総会で丁寧に説明し、区分所有者の理解を得たうえで進めることが実務上の要点になります。
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