最終更新: 2026年7月10日
ペット飼育を禁止している管理規約があるのに黙って飼育している住民がいる、逆に飼育は認めているが鳴き声や臭気で近隣とのトラブルになっている、といった相談は理事会に寄せられやすいテーマです。感情的な対立になりやすい分野のため、規約上の位置づけと対応の手順をあらかじめ理事会で共有しておくことが実務上のポイントです。
ペット飼育のルールは管理規約または使用細則で定められ、禁止・許可制・届出制のいずれかが一般的です。規約違反の飼育が見つかった場合、管理組合はまず事実確認と書面での注意喚起から始め、いきなり強制的な処分や退去を求めることはできません。鳴き声や臭気などの生活トラブルは、掲示や個別注意で改善を促すのが基本で、改善が見られない場合は理事会としての対応記録を積み重ねます。なお身体障害者補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)は身体障害者補助犬法により、マンション標準管理規約のペット禁止規定でも例外扱いとされており、管理組合は受け入れに努めることが求められています。飼育ルール自体を新設・変更する場合は、管理規約の変更にあたるため特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上)が必要です。
マンションのペット飼育ルールは、管理規約本体またはその下位規定である使用細則で定められます。国土交通省のマンション標準管理規約では、ペット飼育を禁止する規定例と、頭数・種類等の条件付きで認める規定例の両方が示されており、実際の定め方はマンションごとに異なります。大きく分けると、①全面禁止、②届出制(飼育を認めるが理事会への届出を必要とする)、③許可制(理事会の承認を要件とする)の3パターンがあり、許可制・届出制の場合は体高・体重の上限、共用部での抱っこやキャリーバッグ使用の義務、飼育できる住戸の位置などを使用細則で細かく定めている例が多く見られます。
禁止規約があるにもかかわらず飼育している住民が見つかった場合、理事会がまず行うのは事実確認です。目撃情報や苦情の内容を記録したうえで、本人に対して規約の内容を伝え、是正を求める書面(注意喚起の文書)を送付するのが一般的な進め方です。管理組合が独断でペットを取り上げたり、強制的に飼育をやめさせたりすることはできず、あくまで規約に基づく是正要求と、応じない場合の段階的な対応(複数回の警告、理事会・総会での報告、悪質な場合の法的措置の検討)という順序を踏む必要があります。感情的な対立を避けるため、対応の経緯は日時・内容を含めて必ず記録に残します。
飼育自体は認められているマンションでも、鳴き声、共用部での放し飼い、臭気、排せつ物の処理不備などをめぐる住民間トラブルは起こり得ます。この場合も、まずは掲示板での一般的な注意喚起、次に該当する住戸への個別の書面連絡という順序で対応するのが実務上の基本です。特定の個人を名指しした掲示は避け、事実関係と改善を求める内容を淡々と伝えることがトラブルの拡大を防ぎます。苦情を申し立てた住民には、対応状況を適宜フィードバックし、理事会が放置していない姿勢を示すことも重要です。
盲導犬・介助犬・聴導犬などの身体障害者補助犬は、身体障害者補助犬法に基づき、不特定多数が利用する施設等での同伴受け入れが定められており、国土交通省のマンション標準管理規約でもペット禁止規定に「身体障害者補助犬法に規定する身体障害者補助犬を使用する場合はこの限りでない」という例外文言が示されています。分譲マンションのような民間の集合住宅における受け入れは努力義務とされていますが、体高や種類を制限している管理組合でも、大型犬である補助犬については受け入れに努めることが求められています。ペット飼育を全面禁止しているマンションであっても、補助犬の同伴を理由に一律で拒否する対応は避け、個別の状況を確認したうえで柔軟に対応することが望まれます。
「禁止から許可制に変えたい」「新たに頭数制限を設けたい」など、ペット飼育に関するルール自体を変更する場合、その規定が管理規約本体に置かれているときは規約の変更にあたり、区分所有法第31条に基づき区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別決議が必要です。一方、使用細則としてペット飼育の詳細ルールを定めている場合は、使用細則の制定・変更にあたるため、原則として区分所有者及び議決権の各過半数の普通決議で足ります。どちらの手続きが必要かは、現行の規約・細則の条文構成によって異なるため、変更を検討する段階でマンション管理士等の専門家に確認しておくと、決議の有効性をめぐるトラブルを防ぎやすくなります。
Q: 賃借人が無断でペットを飼育している場合、管理組合は誰に注意すればよいですか。
A: 区分所有者(貸主)と賃借人の双方に事実を伝え、是正を求めるのが一般的です。区分所有者には、賃貸借契約における使用細則遵守の周知徹底を依頼する対応も考えられます。
Q: ペット飼育を理由に管理費を追加徴収することはできますか。
A: ペット飼育者に一律の追加費用を課す場合は、規約・細則にその根拠を明記し、総会で決議する必要があります。根拠のないまま一部の住民にのみ追加負担を求めることは避けるべきとされています。
Q: 何度注意しても改善しない場合、退去させることはできますか。
A: 区分所有法上の共同利益背反行為として、行為の差止め・使用禁止・競売請求などの法的手段が制度上は存在しますが、いずれも裁判所の判断を要する重い手続きです。実行の可否は個別の事情によって大きく異なるため、弁護士等の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
マンションのペット飼育トラブルは、規約・細則の内容確認、事実確認と書面での是正要求、段階的な対応記録という順序で進めることが基本です。身体障害者補助犬は受け入れの例外として扱われる点、飼育ルールの変更が規約改正(特別決議)か使用細則の変更(普通決議)かで手続きが異なる点は、対応を検討する早い段階で確認しておくことが実務上の要点です。個別の法的対応が必要になった場合は、弁護士等の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
書式・テンプレートをすぐ使いたい方へ
理事会・総会・管理会社変更・修繕など実務で使えるWord書式10冊をまとめたセットをnoteで販売しています。