最終更新: 2026年7月12日
駐車場の空き区画対策として、カーシェアリング事業者への貸出や住民向けカーシェアサービスの導入を検討する管理組合が増えています。区画を有効活用できる一方で、契約形態によって管理組合の収入になるかどうかが変わり、既存の月極駐車場契約者の解約が進むと駐車場収入自体が目減りするジレンマもあります。導入を検討する段階で押さえておきたい論点を整理します。
カーシェアリング導入は「誰が事業者と契約するか」「誰が利用できるか」で性質がまったく異なります。事業者に区画を賃貸して管理組合に賃料収入が入る形態と、区分所有者が個人でカーシェア会員になるだけで管理組合の収入にはならない形態があり、また居住者だけが使えるクローズド型か、外部会員にも開放するオープン型かによって、規約変更(特別決議)の要否が変わります。導入前に「収益になるのか」「区分所有者以外が敷地に出入りする形になるのか」の2点を切り分けて確認することが実務の出発点です。
マンションの駐車場は、車離れや高齢化により空き区画が増える一方、月極契約者の減少は管理組合の駐車場使用料収入の減少に直結します。空き区画の活用策としてカーシェアリング導入の提案を受ける機会が増えていますが、検討時に整理しておきたいのは次の2つの軸です。
駐車場の使用に関するルールは、多くのマンションで管理規約またはこれに基づく駐車場使用細則に定められています。カーシェア事業者に区画を賃貸する、あるいは外部会員が敷地内の駐車場を利用できるようにするオープン型は、区分所有者以外の第三者に駐車場を使わせることになるため、駐車場使用細則・規約の規定に「第三者への貸与・カーシェア事業者との契約」を可能にする内容を追記する規約変更が必要になるケースが一般的です。規約の変更は区分所有法上の特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成)が必要とされており、駐車場使用料の設定・変更のみであれば使用細則の変更として普通決議で足りる場合もありますが、どちらの手続きが必要かは現在の管理規約・使用細則の定め方と、導入するカーシェアの形態(設置型かオープン型か等)によって判断が分かれます。理事会だけで判断せず、管理会社・マンション管理士等の専門家に個別の規約を示して確認することをおすすめします。
居住者の既存契約区画をそのまま使う個人契約型のクローズド運用は、利用者が引き続き区分所有者本人であるため、第三者への貸与に該当しない整理ができる場合もありますが、この点も規約の定め方次第であり、断定はできません。
設置型でカーシェア事業者と管理組合が直接契約する場合、区画の賃料または利用実績に応じた歩合収入が管理組合の収入になり、修繕積立金や管理費会計の足しにできる可能性があります。一方で、カーシェアの普及によって「自家用車を手放してカーシェアに乗り換える」区分所有者が増えると、それまで月極駐車場契約料を払っていた区画の解約が進み、管理組合の駐車場使用料収入そのものが減少します。駐車場使用料収入を修繕積立金の原資に組み込んでいる管理組合では、長期修繕計画の資金計画にも影響し得るため、カーシェア導入による増収効果と、既存駐車場契約の解約による減収リスクの両方を試算したうえで判断することが実務上の要点です。
カーシェア事業者が提供する自動車保険は、事業者に登録した会員本人・予約者本人の運転による事故を前提に補償されるのが一般的で、非会員や予約していない第三者が運転して事故を起こした場合は補償対象外となるケースがあります。この点はカーシェア事業者側の契約約款の問題であり、管理組合が直接の責任を負う場面は限定的です。ただし、駐車場の区画線・看板・充電設備など、駐車場として利用するための工作物の設置や管理状態に瑕疵があり、それが原因で事故や設備トラブルが発生した場合は、民法上の土地工作物責任(民法717条)に基づき管理組合が損害賠償を求められる可能性があります。設置工事の際は、区画整備や看板設置の施工内容を事業者任せにせず、管理組合としても内容を把握しておくことが望まれます。
管理組合が区分所有者以外(カーシェア事業者や外部会員)に駐車場を貸し付けて対価を得る行為は、法人税法上の収益事業に該当し得るとされています。該当する場合は法人税の申告義務が生じる可能性があるため、導入を検討する段階で税理士に相談し、既存の駐車場外部貸出やその他の収益事業の有無とあわせて課税関係を確認しておくことをおすすめします。
なお、事業者によっては設置場所の条件(平面駐車場・自走式駐車場であること、看板設置が可能であること、防犯上のセキュリティエリア外であることなど)を設けている場合があります。機械式駐車場や既存の防犯区画内は対象外となることもあるため、検討初期の段階で事業者に建物の駐車場形状を伝えて設置可否を確認しておくと手戻りが少なくなります。
Q: 駐車場全体をカーシェアに切り替える必要がありますか。
A: 一般的には空き区画の一部を活用する形で導入するケースが多く、既存の月極契約者がいる区画まで一律に切り替える必要はありません。導入する区画数は管理組合の判断で決められます。
Q: 導入後に既存の駐車場契約者からの反対が出た場合、撤退できますか。
A: 事業者との契約書に定めた契約期間・中途解約条件によります。短期間での撤退を想定する場合は、契約前に解約条件を必ず確認しておくことが必要です。
Q: EV充電設備とあわせて導入することはできますか。
A: カーシェア車両がEV・PHEVの場合は充電設備の設置とセットで検討する事業者もあります。電気容量や配線工事の要否は別途確認が必要なため、EV充電設備の導入検討とあわせて事業者に相談することをおすすめします。
カーシェアリング導入は空き区画対策として有効な選択肢になり得ますが、契約形態(設置型か個人契約型か)と利用範囲(クローズド型かオープン型か)によって、管理組合の収入になるかどうか、規約変更が必要かどうかが変わります。増収の試算だけでなく、既存駐車場契約の解約による減収リスク、事故時の責任の切り分け、税務上の扱いまで確認したうえで、複数事業者の比較・専門家への相談を経て総会に諮ることが実務上の要点です。
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