最終更新: 2026年7月13日
大規模修繕工事は数千万円規模の契約になることが多く、工事期間も半年から1年前後に及びます。この間に施工会社が資金繰りに行き詰まり倒産すると、工事が中断するだけでなく、すでに支払った工事代金の一部が戻らない、代替の施工会社を探すために追加費用がかかるといった負担が管理組合にのしかかります。工事会社の倒産そのものは事前に予測しづらい一方、契約段階で備えておける対策はあります。履行保証保険・工事完成保証制度の仕組みと、契約時に確認しておきたい支払い方法のポイントを整理します。
施工会社の倒産リスクへの備えは、大きく分けて「保険・保証制度への加入」と「支払い方法の設計」の2つです。履行保証保険(一般社団法人マンションあんしんセンターと日新火災海上保険が2022年10月に共同開発)や工事完成保証制度は、施工会社が倒産して工事を継続できなくなった場合に、支払い済みの着工金・中間金と代替業者への発注費用との差額を保険金・保証金でカバーする仕組みです。ただしこれらは任意加入のため、管理組合の側から施工会社・保証機関に申し入れなければ自動的には付きません。もう一つの備えが支払い方法の設計です。工事代金を契約時に一括で前払いするのではなく、契約時・中間時・完了時などに分割し、かつ出来高(実際に完了した工事の割合)に応じて支払う「出来高払い」を基本にしておけば、倒産時に未払いのまま失う金額を抑えられます。保険・保証制度と支払い方法の両方を、契約前の見積もり比較・契約書確認の段階で検討しておくことが実務上のポイントです。
特にマンションの場合、区分所有者への追加の一時金徴収や、再度の総会決議が必要になるなど、対応に時間と手間がかかりやすいことが実務上の負担になります。
大規模修繕工事の施工会社倒産リスクに対応する保険・保証制度として、以下のようなものがあります。
これらはいずれも任意加入の商品・制度であり、契約する施工会社や保証機関の側から自動的に付帯されるわけではありません。管理組合・設計コンサルタントの側から、見積もり比較の段階で加入の要否や保険料負担を確認しておく必要があります。
保険・保証制度への加入とあわせて、契約書に定める支払い方法そのものを見直すことも、倒産リスクへの備えになります。
大規模修繕の進め方には、管理組合が施工会社に直接発注する「責任施工方式」と、設計コンサルタントが工事監理を担う「設計監理方式」があります。設計監理方式では、コンサルタントが工事の進捗・出来高を第三者の立場で確認するため、出来高払いの運用や、施工会社の経営状況に異変がないかの早期把握という点でも役割を果たしやすいとされています。コンサルタントの選び方自体は別記事で扱っていますが、倒産リスクへの備えという観点でも、工事監理を担う第三者の存在は実務上の意味を持ちます。
Q: 履行保証保険に加入すると、保険料は誰が負担しますか。
A: 保険商品によって取り扱いが異なるため一律には言えませんが、工事費用の一部として管理組合側の負担になる場合と、施工会社側が負担する場合があります。見積もり比較の段階で保険料負担の有無・金額を確認しておくことが実務上のポイントです。
Q: 契約書に出来高払いの条件を入れれば、倒産リスクは完全になくなりますか。
A: 完全になくなるわけではありません。出来高払いは「支払った額」と「実際の工事の価値」の差を小さく抑える対策であり、倒産そのものを防ぐものではありません。履行保証保険・工事完成保証制度とあわせて検討することで、リスクをより小さくできます。
Q: すでに契約済みの工事で、施工会社の経営状況に不安を感じた場合はどうすればよいですか。
A: 個別の状況によって対応が変わるため、管理会社・設計コンサルタント、必要に応じて弁護士等の専門家に早めに相談することが実務上の進め方になります。
大規模修繕工事中の施工会社倒産は、工事の中断・追加費用・支払済み代金の回収困難といった負担を管理組合にもたらします。履行保証保険や工事完成保証制度は、こうした事態に備える任意加入の仕組みであり、管理組合側から加入を検討・申し入れる必要があります。あわせて、契約時の支払い方法を一括前払いではなく出来高払い中心に設計しておくことも、倒産時の負担を抑える実務的な対策です。見積もり比較・契約書確認の段階で、保険・保証制度の要否と支払い条件をあわせて確認しておくことが要点です。
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