最終更新: 2026年7月11日
マンションの総会は、区分所有者・議決権の各過半数を定足数として集会(会場開催またはオンライン参加)を開くのが原則です。ただし区分所有法45条は、一定の条件のもとで集会そのものを開かずに決議を成立させる方法も認めています。それが本記事で扱う「書面決議」と「みなし決議」です。IT総会システムを使った電子投票(集会は開いた上で議決権行使の手段を電子化するもの)とは別の制度である点も含めて整理します。
区分所有法45条には、集会を開かずに決議を成立させる2つの方法が定められています。第1項の「書面決議」は、まず「書面または電磁的方法で決議することに賛成するか」を区分所有者全員から個別に承諾を得たうえで、議案ごとにあらためて賛否を取る2段階の手続きです。第2項の「みなし決議」は、区分所有者全員が特定の議案について書面または電磁的方法で合意した場合、その時点で集会決議があったものとみなす制度で、新築マンションの引き渡し前に区分所有者となる予定者から書面を取り付けておく用途などで使われます。いずれも「区分所有者全員」の合意が前提であり、一人でも承諾・合意が得られなければ成立しません。既存マンションでは全員の所在確認や連絡先の把握が壁になりやすく、実務上は小規模な管理組合や緊急性の高い一部の議案に限って検討されることが多い制度です。
区分所有法における総会(集会)決議は、原則として区分所有者・議決権の各過半数の出席(本人出席・代理出席・議決権行使書の提出のいずれか)を定足数として、会議の場で議案の賛否を取る形で行われます。これに対して同法45条は、区分所有者全員の同意があることを条件に、集会という「場」自体を開かずに決議を成立させる仕組みを定めています。条文上は第1項(書面決議・書面総会)と第2項(みなし決議)の2つの方法があり、どちらも「全員の合意」が絶対条件になっている点は共通していますが、手続きの流れが異なります。
第1項の書面決議は、実務上「書面総会」と呼ばれることもあり、2段階の手続きを踏みます。まず区分所有者全員に対し、「今回の議案を書面または電磁的方法による決議とすることに承諾するか」を個別に確認し、全員の承諾を得ます。この承諾が得られた後、あらためて議案ごとに賛成・反対の意思表示を書面または電磁的方法で求め、その結果を集計して決議とします。ポイントは、承諾は議案を包括して一括で取得することはできず、決議を要する事項それぞれについて個別に得る必要があるとされている点です。総会を1回で終わらせたい場合でも、複数議案があれば議案ごとに承諾と賛否の2段階を踏む必要があり、通常の集会決議よりも手続きが煩雑になりやすい面があります。
第2項のみなし決議は、区分所有者全員が特定の事項について書面または電磁的方法によって合意したときは、その内容で集会の決議があったものとみなす制度です。第1項のような「決議方法についての事前承諾」の段階を経ず、合意そのものが決議と扱われる点が異なります。実務では、新築マンションの分譲時に、引き渡し前の区分所有者となる予定者(買主)から管理規約や最初の役員選任などについて書面の同意を取り付けておき、実際に引き渡しが行われたことを停止条件として決議が成立したものとする使い方が中心です。既存の管理組合が通常の総会運営の代替として日常的に使う場面は限られますが、緊急性が高く関係者が少数の議案(例えば区分所有者数が少ない小規模マンションでの規約変更)で選択肢になり得ます。
「集会を開かずに書面や電磁的方法で決議する」という言葉から、IT総会システムを使った電子投票と混同されやすい制度ですが、両者は前提が異なります。電子投票は、総会(集会)自体は招集・開催したうえで、出席や議決権行使の手段としてオンライン会議システムや電子投票フォームを利用するものです。集会という「場」は存在し、定足数も通常の総会と同じ考え方(区分所有者・議決権の各過半数出席)で判定されます。これに対して45条の書面決議・みなし決議は、集会そのものを開かず、区分所有者全員の合意によって決議を成立させる制度であり、出席・欠席という概念自体がありません。管理組合のIT化を検討する際は、「集会は開いてオンライン参加を認める話」なのか、「集会自体を開かない話」なのかを区別して議論することが重要です。
書面決議・みなし決議の最大の制約は、区分所有者のうち一人でも承諾または合意が得られなければ決議が成立しない点です。通常の総会決議であれば、出席者(本人出席・代理出席・議決権行使書提出の合計)の過半数や特別多数決の要件を満たせば決議できますが、45条の制度は欠席者・反対者・連絡が取れない区分所有者が一人でもいれば不成立になります。区分所有者数が多いマンションほど全員の所在を把握し連絡を取ること自体が難しくなるため、戸数の少ない小規模な管理組合や、区分所有者の異動が少なく連絡先が把握できているマンションのほうが選択しやすい制度といえます。また、集会という話し合いの場を設けないため、質疑応答や意見交換の機会がなくなる点もデメリットとして指摘されています。
Q: マンションの理事会でも書面決議は使えますか。
A: ここで扱った区分所有法45条は区分所有者による総会(集会)の決議に関する規定です。理事会の決議方法については、管理組合の管理規約や理事会運営細則の定めに従うことになるため、理事会での書面決議の可否は規約を確認してください。
Q: 書面決議とみなし決議、どちらが使いやすいですか。
A: どちらも区分所有者全員の合意が前提という点は共通していますが、第1項の書面決議は「決議方法への承諾」と「議案への賛否」の2段階を踏む分、手続きとしては丁寧な反面、時間がかかります。第2項のみなし決議は合意そのものが決議になるためシンプルですが、実務では新築マンションの引き渡し前など特定の場面での利用が中心です。既存の管理組合でどちらが適しているかは、議案の性質や区分所有者数によって異なるため、専門家に相談することをおすすめします。
Q: 一部の区分所有者と連絡が取れない場合、書面決議は諦めるしかないですか。
A: 45条の書面決議・みなし決議は全員の合意が条件のため、連絡が取れない区分所有者がいる場合は成立させることができません。その場合は、通常どおり総会(集会)を招集し、議決権行使書や委任状の活用、必要に応じて特別多数決の要件(規約変更等は4分の3以上など)を満たす形で決議を進めることになります。
区分所有法45条の書面決議・みなし決議は、集会を開かずに区分所有者全員の合意だけで決議を成立させる制度で、通常の総会決議やIT総会での電子投票とは前提が異なります。第1項の書面決議は「決議方法への承諾」と「議案への賛否」の2段階手続き、第2項のみなし決議は合意そのものが決議になる制度で、いずれも全員合意が絶対条件です。既存の管理組合で活用を検討する場合は、区分所有者全員の連絡先を把握できているかをまず確認し、適用の可否や手続きの詳細はマンション管理士・弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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