最終更新: 2026年7月13日
「うちのマンションは地震保険に入っているのか」「入っているとして、地震が起きたらどのくらい保険金が出るのか」——理事に就任して保険証券を初めて見たとき、こうした疑問を持つ方は少なくありません。地震保険は火災保険の「見直しポイントの一つ」として一言で片づけられがちですが、単独では加入できない仕組みや、支払われる保険金の範囲、法人契約特有の注意点まで理解しておくと、更新時の判断や住民への説明がしやすくなります。
地震保険は火災保険とセットでなければ加入できず、単独契約はできません。共用部分に一括で加入する場合、地震保険金額は共用部分の火災保険金額の30〜50%の範囲内で設定するのが一般的な仕組みです。実際に支払われる保険金は、建物の主要構造部の損害割合をもとに判定される「全損・大半損・小半損・一部損」の区分に応じて、地震保険金額の100%・60%・30%・5%となります。個人が加入する地震保険には所得税・住民税の地震保険料控除がありますが、管理組合(管理組合法人を含む)が法人として契約する保険料にはこの控除は適用されません。地震保険への加入・保険金額の変更は保険料負担の増減を伴うため、多くの管理組合で総会決議事項として扱われており、理事会だけで判断せず管理規約の定めを確認することが実務上の基本です。また、地震保険金はあくまで復旧費用の一部に充てるものであり、修繕積立金の代わりにはならない点も押さえておく必要があります。
地震保険は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険です。火災保険の多くは、地震を原因とする火災(いわゆる地震火災)を補償の対象外としているため、地震保険をセットしていないと、地震で共用部分が焼失・損壊しても保険金が支払われないことがあります。
このため地震保険は制度上、単独では契約できず、必ず火災保険とセットで契約する仕組みになっています。マンションの共用部分の火災保険を更新する際は、地震保険が付帯されているか、付帯されていない場合はなぜ外れているのか(保険料を抑えるためにあえて付帯していない場合もあります)を確認しておくことが、見直しの出発点になります。
共用部分に一括で地震保険を付帯する場合、地震保険金額は共用部分の火災保険金額に対して30〜50%の範囲内で設定するのが一般的な考え方です。上限いっぱいの50%まで付帯するか、保険料負担を抑えて30%程度に留めるかは、管理組合ごとの判断になります。
判断材料としては、建物の立地(地震の想定リスクが高い地域かどうか)、耐震診断の結果や耐震等級、修繕積立金の積立状況、保険料の負担感などが挙げられます。修繕積立金に十分な余裕がある管理組合ほど地震保険の割合を低めに設定し、積立金が心もとない管理組合ほど高めに設定するという考え方もありますが、唯一の正解があるわけではなく、理事会・総会で建物の実情に合わせて検討することになります。
地震保険で実際に支払われる保険金は、被害の程度に応じて4段階の区分で決まります。
この区分は、個々の住戸単位ではなく、建物の基礎・屋根・外壁などの主要構造部全体の損害割合を合計して判定されます。マンションのように規模が大きい建物では、外観上はひび割れなどが見られても、主要構造部全体の損害割合としては「一部損」やそれ以下の判定にとどまるケースもあります。地震保険は「地震が起きれば復旧費用の全額が出る保険」ではなく、損害の程度に応じた一定割合の保険金が支払われる仕組みであることを、理事会・住民に説明する際に押さえておくとよいでしょう。
個人が自宅について地震保険に加入すると、所得税・住民税の計算上、地震保険料控除(所得税は年間最大5万円、住民税は最大2万5千円が控除限度額)を受けられます。しかし、この控除は個人の所得税・住民税の制度であり、管理組合(管理組合法人を含む)のように法人・団体として契約する保険料には適用されません。
管理組合が支払う地震保険料は管理組合の経費(管理費・積立金からの支出)として会計処理されるものであり、個人の確定申告のような控除の仕組みは働きません。この点は保険料の総額を検討する際に誤解が生じやすいため、収支報告や総会説明の際に「管理組合の保険料には個人向けの控除は適用されない」ことを明記しておくと、住民からの質問に答えやすくなります。
地震保険の新規付帯や保険金額の変更は、保険料負担の増減を伴う財産管理に関わる事項であるため、多くの管理組合では総会決議事項として扱われています。実際の要否は管理規約の定め(理事長の職務権限の範囲、重要な財産の管理・変更に関する条項)や、これまでの運用実績によって異なるため、まずは自分のマンションの管理規約を確認することが実務上の第一歩になります。
火災保険の更新は通常数年ごとに到来するため、更新の3〜4か月前を目安に、現在の地震保険の付帯状況・保険金額の割合・保険料を整理し、変更が必要であれば理事会で検討したうえで総会に諮る、という段取りを組んでおくと、更新期限に追われて前回と同じ条件で継続するだけになることを避けられます。
地震保険金は、大規模な地震で共用部分が損害を受けた場合の復旧費用の一部に充てるものであり、長期修繕計画に基づく計画的な修繕費用(外壁・屋上防水・給排水管更新など)を賄う修繕積立金の代わりにはなりません。地震保険の保険金額は火災保険金額の最大でも50%までしか設定できないため、仮に全損認定を受けたとしても、建替えや大規模な復旧に必要な費用の全額を地震保険だけでまかなうことは想定しにくい仕組みになっています。
そのため、地震保険はあくまで「復旧初動の資金の一部を確保する備え」と位置づけ、建物の耐震性そのものを高める耐震診断・耐震改修の検討や、長期修繕計画における積立金水準の見直しとあわせて考えることが実務上の基本になります。
Q: 共用部分の火災保険に地震保険が付帯されているかどうか、どこで確認できますか。
A: 保険証券・保険契約のしおり(重要事項説明書)に地震保険の有無と保険金額が記載されています。不明な場合は、管理会社や保険代理店に契約内容の一覧を出してもらうと確認しやすくなります。
Q: 地震保険の保険金額は、火災保険金額の何%まで設定できますか。
A: 共用部分に一括で加入する場合、地震保険金額は共用部分の火災保険金額の30〜50%の範囲内で設定するのが一般的です。上限まで付帯するか保険料を抑えて低めに設定するかは、建物の立地や修繕積立金の状況を踏まえて理事会・総会で検討します。
Q: 地震で共用部分にひび割れが生じましたが、保険金は出ますか。
A: 建物の主要構造部全体の損害割合の合計で「全損・大半損・小半損・一部損」のいずれかに区分され、区分に応じた割合の保険金が支払われます。外観上の損傷があっても、判定基準に満たない場合は保険金の対象にならないことがあるため、被害が生じた際はまず保険会社・代理店に連絡し、損害鑑定の手続きを確認することが基本です。
地震保険は火災保険とセットでなければ加入できず、共用部分に一括加入する場合の保険金額は火災保険金額の30〜50%の範囲で設定します。実際の支払いは損害区分(全損100%・大半損60%・小半損30%・一部損5%)に応じた割合にとどまり、全額補償ではありません。管理組合が法人として支払う保険料には個人向けの地震保険料控除は適用されず、加入・変更は保険料負担の増減を伴うため多くの場合は総会決議事項になります。地震保険金は復旧費用の一部にすぎず、長期修繕計画に基づく修繕積立金の代わりにはならないことを踏まえ、更新時期から逆算して理事会で検討することが実務上の基本です。
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