最終更新: 2026年7月13日
近隣に高層建物の建築計画が持ち上がると、「日当たりが悪くなる」「見晴らしが遮られる」という声が住民から上がることがあります。このとき、管理組合として組織的に動ける範囲と、区分所有者個人の問題として切り分けるべき範囲が曖昧なまま話が進み、対応に迷う理事会は少なくありません。日照権・眺望権の法律上の位置づけと、建築計画が持ち上がったときに管理組合が実務的にできることを整理します。
日照権は法律に明記された権利ではありませんが、既存の判例上、権利の濫用にあたるような著しい日照阻害については不法行為による損害賠償が認められる余地があるとされています。一方、眺望権は日照権よりもさらに認められにくく、特別な事情がない限り法的な保護の対象になりにくいのが実情です。ただし、特定の専有部分に対する日照・眺望の影響は、原則としてその区分所有者個人が受ける被害であり、損害賠償請求など個人の権利に関わる法的手続きは区分所有者本人の判断で進める性質のものとされています。管理組合の目的は建物・敷地及び附属施設の管理にあるため、共用部分に具体的な影響が及ぶ場合を除き、管理組合が原告となって個々の住戸の日照被害について訴訟を起こせるかどうかは専門家に個別に確認すべき論点です。一方で、多くの自治体には中高層建築物の建築紛争を予防するための条例があり、建築主には近隣住民への説明会開催が義務付けられています。管理組合が実務的にできることは、住民の意見を集約して理事会として説明会に出席し、質問・要望を伝えること、行政の建築紛争調整制度の利用を住民に案内することが中心になります。設計変更や工事中止を強制する権限は、条例にも管理組合にもありません。
日照権とは、住居に差し込む日照を享受できる利益のことを指しますが、憲法や民法に明記された権利ではありません。それでも、近隣に建物が建つことで日照が著しく阻害された場合、裁判では「受忍限度」という考え方を基準に、不法行為に基づく損害賠償が認められることがあります。受忍限度を超えるかどうかは、日照が遮られる時間・範囲だけでなく、建築基準法など関係法令に違反していないか、建築主が近隣への配慮をどの程度行ったか、その地域の用途地域や既存の建物環境などを総合的に考慮して判断されるとされています。単に「日当たりが悪くなった」というだけで自動的に権利侵害が認められるわけではない点に注意が必要です。
眺望権とは、これまで享受してきた景色や見晴らしを、他の建物などに妨げられずに眺められる利益のことです。日照権以上に法律上の根拠が薄く、裁判でも権利として認められるかどうかが争点になりやすいとされています。眺望が特定の物件の価値の中心的な要素になっている、あるいは眺望を前提とした特別な契約関係があるといった事情がない限り、一般的な「見晴らしがよかった」という理由だけで法的な保護を受けるのは難しいのが実情です。
区分所有法上、管理組合の目的は建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うことにあります。特定の専有部分(住戸)への日照・眺望の影響は、その専有部分を所有する区分所有者個人が受ける被害であり、損害賠償請求や工事差し止めの仮処分といった法的手続きは、原則として区分所有者本人が自らの判断で進める性質のものとされています。管理組合が組合として原告になれるかどうかは、影響が共用部分(共用の中庭・屋上庭園・共用廊下の採光など)に具体的に及んでいるか、建物全体の資産価値に関わる事情かどうかによって変わってくる、個別性の高い論点です。管理組合として訴訟対応を検討するような局面になった場合は、まず弁護士に相談し、管理組合として動ける範囲を確認することをおすすめします。
東京23区をはじめ、多くの市区町村では「中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」など、名称は自治体によって異なるものの類似の趣旨の条例を定めています。この条例に基づき、一定の高さ・規模を超える建物を建てる建築主には、次のような対応が義務付けられているのが一般的です。
説明会等では、日照・通風・採光の阻害、風害、電波障害、プライバシーの侵害、工事中の騒音・振動・工事車両の通行といった、周辺の生活環境に関わる事項について、建築主と近隣住民が話し合う場が設けられます。ここでの話し合いは任意の調整が基本であり、合意に至らない場合は、自治体の担当窓口によるあっせん・調停の制度を利用する流れになるのが一般的です。具体的な手続き・対象となる建物の規模は自治体ごとに異なるため、該当する市区町村の建築指導課等の窓口で確認する必要があります。
Q: 管理組合として建築主に工事の中止や設計変更を求めることはできますか。
A: 中高層建築物紛争予防条例に基づく説明会等で意見や要望を伝えることは可能ですが、建築主に設計変更や工事中止を強制する法的な権限は条例にも管理組合にもありません。話し合いによる任意の調整が基本であり、合意に至らない場合は自治体のあっせん・調停制度を利用する流れになります。
Q: 個々の住戸の日当たりが悪くなった場合、管理組合として損害賠償請求はできますか。
A: 特定の専有部分への日照・眺望の影響は、原則としてその区分所有者個人が受ける被害であるため、損害賠償請求など個人の権利に関する法的手続きは区分所有者本人が判断して進める性質のものとされています。管理組合として組織的に対応できる範囲や、共用部分への影響がある場合の扱いは個別の事情によって異なるため、弁護士への相談をおすすめします。
Q: 建築計画の説明会には誰が出席すべきですか。
A: 決まったルールはありませんが、理事会が住民の意見を集約したうえで理事長や担当理事が出席し、質問・要望を伝える形が実務上は多く見られます。個々の区分所有者が個別に出席することもできますが、管理組合としてまとまった意見を伝える方が建築主側にも状況が伝わりやすくなります。
近隣の建築計画による日照・眺望への影響は、管理組合がすべて代わりに解決できる問題ではなく、共用部分への影響と、個々の区分所有者が受ける個人的な被害を切り分けて考える必要があります。管理組合として実務的に動けるのは、住民の意見を集約して説明会に出席すること、行政の紛争調整制度を案内することが中心であり、設計変更や損害賠償請求といった強制力を伴う対応は、条例の枠組みや個々の区分所有者の判断・弁護士への相談に委ねられます。計画が持ち上がった段階で、まず自治体の建築指導課等の窓口に相談することが現実的な出発点になります。
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