管理組合の教科書

管理組合が自主管理を始めるときの進め方|管理委託契約の解除手順と業務の洗い出し

最終更新: 2026年7月10日

管理費の削減や管理会社への不満をきっかけに、「自主管理に切り替えられないか」という声が理事会で出ることがあります。自主管理は管理委託費を抑えられる可能性がある一方、これまで管理会社が担っていた業務をすべて組合側で引き受けることになるため、始める前に業務量と体制を具体的に洗い出しておくことが実務上のポイントです。

結論

自主管理とは、管理会社に管理事務を委託せず、理事会・区分所有者が主体となって会計・清掃・設備点検・住民対応などの管理業務を行う方式です。移行にあたっては、現在の管理委託契約の解約予告期間を確認し、契約書に定められた期日までに解除の意思表示を行う必要があります。あわせて、管理会社が担っていた業務を項目ごとに洗い出し、組合内で対応できる範囲と、清掃や設備点検など部分的に外部へ委託する範囲を切り分けて検討することが実務上の要点です。管理会社という第三者チェック機能がなくなる分、会計処理の適正性を組合自身で確保する体制づくりも欠かせません。

自主管理と管理会社委託の違い

管理会社に委託している場合、国土交通省の標準管理委託契約書に基づき、事務管理業務(会計の収支管理・出納、総会・理事会の運営支援)、管理員業務、清掃業務、建物・設備管理業務の4分野をまとめて委託しているケースが一般的です。自主管理はこれらの業務を管理会社を介さずに組合が直接担う方式で、全業務を組合内で完結させる「完全自主管理」と、会計や清掃など一部だけを外部へ個別発注する「部分委託型の自主管理」の両方があります。どこまでを自前で行うかは、理事の担い手の状況や住戸数によって現実的な範囲が変わります。

管理委託契約を解除する手順

自主管理へ移行する第一歩は、現在の管理委託契約の解除です。管理委託契約書には解約に関する条項があり、標準管理委託契約書のコメントでは、契約期間中に解約する場合は一定期間(3ヶ月前などとする例が多い)前までに書面で申し入れることが目安として示されています。実際の予告期間は管理組合ごとの契約内容によって異なるため、まず自分の管理組合の契約書を確認することが最初の作業になります。解除の意思決定自体は理事会の業務執行として進められる場合もありますが、管理会社変更・自主管理化は住民生活への影響が大きいテーマのため、総会で方針を説明し合意形成を図ったうえで進める管理組合が多く見られます。

移行前に洗い出す業務

自主管理へ切り替える前に、現在管理会社が行っている業務を項目ごとに一覧化します。具体的には、管理費・修繕積立金の収納状況の管理と督促、出納・会計帳簿の作成、総会・理事会資料の作成支援、建物・設備の法定点検の手配、日常清掃、管理員によるフロント対応、緊急時(漏水・設備故障等)の一次対応窓口などが挙げられます。これらのうち、誰が・どの頻度で・どの程度の時間をかけて対応するのかを具体的に見積もったうえで、理事会内で分担できる範囲と、外部の管理業務主任者やビルメンテナンス会社へ個別発注する範囲を切り分けます。

会計・法定点検のチェック体制をどう確保するか

管理会社に委託している場合、会計処理や法定点検の実施状況は管理業務主任者による重要事項説明や定期報告を通じて一定のチェックが働いています。自主管理に移行すると、この第三者チェック機能がなくなるため、会計担当と理事長を分けて相互確認する体制、外部の会計事務所や管理業務主任者へのスポット相談、監事による会計監査の強化など、組合内でチェック機能を代替する仕組みをあらかじめ用意しておくことが重要です。消防設備点検や昇降機保守点検など法定点検の手配漏れが起きないよう、点検周期を一覧化した管理台帳を作成しておくことも実務上有効です。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: 自主管理に移行した後、うまくいかない場合は管理会社に戻せますか。

A: 制度上、改めて管理会社と委託契約を結び直すことは可能です。ただし新たな管理会社選定には一定の時間がかかるため、自主管理移行時点で「立て直しが難しい場合の選択肢」も理事会内で共有しておくと、いざというときの判断が早くなります。

Q: 管理業務主任者資格を持つ理事がいなくても自主管理はできますか。

A: 法律上、管理組合が自ら管理を行うこと自体に資格要件はありません。ただし会計・法定点検など専門性が必要な業務は、外部の管理業務主任者やマンション管理士へスポットで相談できる体制を整えておくことが実務上望まれます。

Q: 自主管理に向いているマンションの目安はありますか。

A: 住戸数が少なく理事の担い手が確保しやすい、会計・事務作業に協力的な区分所有者がいる、といった条件が揃っている管理組合で導入例が見られますが、向き不向きは個別事情によって大きく異なるため、断定的に判断せず具体的な業務量の見積もりをもとに検討することをおすすめします。

まとめ

自主管理を始める際は、現在の管理委託契約の解約予告期間を確認したうえで解除手続きを進め、管理会社が担っていた業務を項目ごとに洗い出して、組合内で対応する範囲と外部委託する範囲を切り分けることが実務上の要点です。会計処理や法定点検の第三者チェック機能が失われる点を踏まえ、組合内での相互確認体制や外部専門家へのスポット相談先をあらかじめ用意しておくと、移行後のトラブルを防ぎやすくなります。

この記事について 本記事は、管理組合が自主管理へ移行する際の一般的な進め方を紹介する目的で作成しています。管理委託契約の解約条件や必要な手続きは契約書の内容によって異なるため、実際の検討にあたっては現在の契約書の確認とあわせて、管理業務主任者・マンション管理士等の専門家へ相談することをおすすめします。
最終確認日: 2026年7月10日 / 参照: 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」

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