管理組合の教科書

大規模修繕とアスベスト(石綿)事前調査|義務化の内容と管理組合が確認する費用・罰則

最終更新: 2026年7月11日

外壁塗装や防水改修、給排水管の更新など、マンションの大規模修繕には石綿(アスベスト)を含む建材が使われている可能性があります。2023年10月以降、こうした改修工事の前には有資格者による事前調査が法律で義務付けられており、管理組合が知らないまま進めると工事の遅延や罰則の対象になりかねません。大規模修繕を検討する管理組合が確認しておきたい調査義務の範囲・費用・罰則の考え方を整理します。

結論

石綿障害予防規則の改正により、建築物の解体・改修工事を行う際は、2023年10月1日以降に着手する工事から、厚生労働大臣が定める講習を修了した有資格者が、工事対象部分の建材について石綿含有の有無を事前調査することが法律で義務付けられています。マンションの大規模修繕(外壁塗装・防水改修・給排水管更新など)はこの「改修工事」に該当するのが通常で、調査を省略することはできません。さらに、解体工事は延べ床面積80㎡以上、改修工事は請負金額100万円以上(税込)の工事について、調査結果を「石綿事前調査結果報告システム」から行政へ報告することも義務付けられており、これを怠ると30万円以下の罰金の対象になります。事前調査の費用は建物所有者(管理組合)の負担となるのが通常で、大規模修繕の見積もり・工程を検討する初期段階から、この調査が前提工程として組み込まれているかを施工業者・設計監理者に確認しておくことが実務上の要点です。

なぜ大規模修繕でアスベスト調査が必要になったのか|法改正の経緯

石綿(アスベスト)は断熱性・耐火性に優れる一方、吸引すると中皮腫や肺がんなどの健康被害を引き起こすことが判明しており、日本では2006年に製造・使用が原則禁止されました。しかし、それ以前に建てられた建物には、外壁の吹き付け材・屋根材・断熱材・保温材など、さまざまな建材に石綿が含まれている可能性があります。石綿障害予防規則の改正により、解体・改修工事の際に石綿を見落として飛散させる事故を防ぐため、2022年4月からは有資格者以外による事前調査が原則できなくなり、2023年10月1日以降に着手する工事からは、調査自体を厚生労働大臣が定める講習修了者などの有資格者が行うことが完全に義務化されました。マンションの大規模修繕で行う外壁塗装・タイル補修・防水改修・給排水管の更新工事なども、この「改修工事」に含まれます。建築年が新しく石綿の使用可能性が低いと思われる場合でも、調査自体を省略することはできない点に注意が必要です。

対象となる工事の範囲|大規模修繕はほぼ該当する

事前調査は、解体・改修工事の規模の大小にかかわらず、工事対象部分に使われているすべての建材について行う必要があります。マンションの大規模修繕で一般的に行われる外壁塗装・タイル張替え・屋上防水改修・給排水管更新・サッシ改修などの工事は、いずれも「改修工事」に該当し、調査の対象になります。行政への報告義務が生じるのは、解体工事が延べ床面積80㎡以上、改修工事が請負金額100万円以上(税込)の場合で、マンションの大規模修繕はほとんどのケースでこの基準を超えるため、報告義務も併せて発生すると考えておく必要があります。調査自体は、対象面積や金額の基準に関わらず義務であり、「小規模だから調査は不要」という判断はできません。

費用の目安と負担者の考え方

事前調査の費用は、目視調査や既存の設計図書・石綿含有建材データベース等により含有なしと確認できる場合は比較的低額で済むこともありますが、分析調査が必要な場合は1検体あたり2万〜5万円程度が目安とされ、外壁・屋根・給排水管など複数箇所を調べる大規模修繕では、建物全体で10万円以上かかることも珍しくありません。調査費用は建物の維持管理に関する支出として、大規模修繕工事の見積もりの一部(またはその前段階の付帯費用)として管理組合(修繕積立金)が負担するのが通常です。長期修繕計画・大規模修繕の予算組みの段階で、この調査費用が別途発生することを見込んでおくと、後から予算不足に気づく事態を避けやすくなります。

調査を怠った場合の罰則

有資格者による事前調査を行わずに解体・改修工事に着手した場合や、調査結果の行政報告を怠った場合、石綿障害予防規則違反として30万円以下の罰金の対象になり得ます。罰則の対象は主に工事の発注者・元請業者ですが、管理組合が発注者の立場にある大規模修繕では、管理組合としても「調査が適切に行われたか」を確認する責任があります。施工業者に任せきりにせず、契約前の段階で事前調査の実施計画・有資格者の資格証・報告システムへの登録予定を確認しておくことが、トラブルを避ける実務上のポイントです。

業者選定・契約時に確認しておきたい点

誤解しやすい点

よくある質問

Q: すべての大規模修繕でアスベスト事前調査が必要ですか。

A: 外壁塗装・防水改修・給排水管更新など、建材に手を加える改修工事であれば、規模の大小にかかわらず有資格者による事前調査が必要です。調査自体を省略できる工事はほとんどありません。

Q: 事前調査の費用は誰が負担しますか。

A: 建物の維持管理責任を負う建物所有者(マンションでは管理組合)が負担するのが通常です。大規模修繕の見積もり・予算に調査費用が含まれているかを事前に確認することをおすすめします。

Q: 調査を怠るとどうなりますか。

A: 有資格者による調査を行わずに工事に着手したり、行政報告を怠ったりした場合、30万円以下の罰金の対象になり得ます。工事の遅延や信頼性の低下にもつながるため、契約前の確認が重要です。

まとめ

2023年10月以降、マンションの大規模修繕を含む改修工事では、有資格者による石綿(アスベスト)事前調査が法律で義務付けられています。請負金額100万円以上の工事は行政への報告義務も生じ、調査・報告を怠ると罰則の対象になり得ます。調査費用は管理組合が負担するのが通常のため、大規模修繕の見積もり・長期修繕計画の段階からこの費用と工程を織り込み、契約前に施工業者へ調査の実施計画を確認しておくことが実務上の要点です。

この記事について 本記事は、大規模修繕とアスベスト(石綿)事前調査に関する一般的な考え方を紹介する目的で作成しています。個別の工事における調査対象の判断・報告義務の要否・費用は物件・工事内容ごとの事情によって異なるため、実際の検討にあたっては施工業者・設計監理者、必要に応じて建築物石綿含有建材調査者等の専門家へ確認してください。
最終確認日: 2026年7月11日 / 参照: 厚生労働省・石綿障害予防規則、環境省「石綿事前調査結果の報告について」

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