管理組合の教科書

マンション駐輪場のリチウムイオン電池火災対策|電動アシスト自転車の充電ルールと管理組合の対応

最終更新: 2026年7月10日

電動アシスト自転車やモバイルバッテリーに使われるリチウムイオン電池からの出火が全国的に増えています。マンションの駐輪場・駐輪スペースは、電動アシスト自転車の保管場所であると同時に、住民が個人的にバッテリーを充電する場所にもなりやすく、管理組合として一定のリスク認識と対応の整理が求められる領域です。法令で管理組合に一律の対策が義務付けられているわけではありませんが、共用部分での火災は被害が全戸に及ぶため、早めに実態把握とルール整備を検討しておくことが実務上の要点です。

結論

東京消防庁の集計によると、リチウムイオン電池が関係する火災は増加傾向にあり、令和6年中は過去最多の件数となりました。製品別ではモバイルバッテリーが最も多く、次いでスマートフォン、電動アシスト付自転車、掃除機の順で、充電中の発生が最も多いものの、充電していない待機中にも発生しています。マンションの駐輪場は、電動アシスト自転車の保管に加えて延長コード等を使った個人的な充電が行われやすい場所であるため、管理組合としては①駐輪場・駐輪スペースでの充電を許可制にするか使用細則で扱いを明確にする、②専用の充電コーナーを設ける場合はコンセント容量や延長コードの使用可否を確認する、③発火時の初動対応(近寄らない・大量の水で消火)を掲示等で周知する、の3点を優先的に検討することが実務上の進め方です。

リチウムイオン電池火災の現状

総務省消防庁および東京消防庁は、リチウムイオン電池を内蔵した製品からの出火事故について継続的に注意喚起を行っています。東京消防庁の発表では、リチウムイオン電池が関係する火災は令和6年中に管内で115件発生し、統計を取り始めて以降で最多となりました。製品別の内訳では、モバイルバッテリーが最も多く、次いでスマートフォン、電動アシスト付自転車、掃除機の順に多く発生しています。発生状況別では「充電中」の出火が最も多い一方、充電していない「非充電中(待機中)」の状態でも発生しており、使用していないから安全とは言い切れない点が特徴です。電動アシスト付自転車用のバッテリーは、電気的な不具合や内部短絡(内部でショートが起きる状態)によってセルが発熱・出火することがあり、充電中や使用中に異常な発熱がある、バッテリーが膨らんでいる・変形している、過去に落下させたことがある、といった兆候が見られる場合は火災の危険が高まっているとされています。

マンション駐輪場が抱えやすいリスク

電動アシスト自転車は、通勤・通学・子どもの送迎用として都市部のマンションで急速に普及しており、駐輪場に保管される台数も増えています。管理組合として特に注意したいのは、駐輪場や駐輪スペースの屋外コンセント・共用部のコンセントを使って、住民が個人的にバッテリーの充電を行うケースです。屋外は気温や湿度の影響を受けやすく、延長コードを雨ざらしのまま使用する、複数の機器をタコ足配線で同時に充電する、劣化した非純正バッテリーを使用するといった行為が重なると、火災のリスクがさらに高まります。共用部分での出火は、駐輪中の他の自転車や近接する建物への延焼、煙による避難経路の遮断など、区分所有者全体に被害が及ぶおそれがあるため、専有部での家電火災とは異なる重みで検討する必要があります。

使用細則・ルールとして確認したいポイント

駐輪場・駐輪スペースの使用細則は、多くのマンションで国土交通省のマンション標準管理規約のひな形をもとに各マンションの実情に合わせて作成されています。既存の細則にリチウムイオン電池・充電に関する定めがない場合、管理組合として以下の点を理事会で確認し、必要に応じて細則の見直しを検討することが実務的です。1点目は、駐輪場・駐輪スペースでの個人的な充電行為を許可するか禁止するかの方針決定です。屋外コンセントの用途を清掃・共用設備の保守作業に限定し、個人の充電利用を禁止する運用にしているマンションもあります。2点目は、充電を許可する場合の専用エリアの設置検討で、延長コードの這わせ方や設置台数の上限をあらかじめ決めておくと、トラブルの予防につながります。3点目は、PSEマーク(電気用品安全法に基づく安全基準適合マーク)付きの純正品バッテリーの使用を呼びかける掲示や、著しく劣化・破損したバッテリーを駐輪場に放置しないよう促す注意喚起です。細則自体の変更(規約に基づく使用細則の制定・改廃)は、管理規約の定めに従った総会決議が必要になる点にも留意してください。

発火時の初動対応の基本

東京消防庁の案内によると、リチウムイオン電池からの出火は、火花が飛び散ったり有毒なガスを含む煙が激しく噴き出したりすることがあるため、火花や煙の勢いが強いうちは無理に近づかず、まず119番通報を行うことが基本とされています。火花や煙の勢いが収まった段階であれば、大量の水をかけて消火し、再出火を防ぐため水没させるなどして電池の温度を十分に下げることが有効とされています。粉末消火器での初期消火が可能な場合もありますが、電池内部の熱源自体は消えていないことがあるため、消火後もしばらくは目を離さず、再発火の兆候がないか確認することが望まれます。管理組合としては、駐輪場付近への消火器の配置状況を確認するとともに、発火時の通報先・初動対応の手順を簡潔にまとめた掲示物を用意し、管理員や理事会が対応の流れを共有しておくことが実務上の備えになります。

誤解しやすい点

よくある質問

Q: 駐輪場に消火器を新たに設置する場合、総会決議は必要ですか。

A: 既存の管理費予算の範囲内で消火器を購入・設置する程度であれば理事会の判断で対応できることが多いですが、設置場所や費用規模によっては総会での予算承認や使用細則の変更が必要になる場合もあります。金額や規模に応じて管理会社や理事会で事前に確認することをおすすめします。

Q: 電動アシスト自転車の駐輪自体を禁止することはできますか。

A: 駐輪場の利用制限は使用細則の定めによりますが、電動アシスト自転車を一律に締め出す規制は、利用する住民の生活への影響が大きく、実務上は充電ルールの整備や専用エリアの確保といった対応で折り合いをつけるマンションが多いようです。規制の可否や妥当性はマンション管理士等の専門家に相談することをおすすめします。

Q: 住民が個人で購入した充電式の電動キックボードなども同じ対応でよいですか。

A: 電動キックボードや電動車いすなど、リチウムイオン電池を搭載する製品全般が同様のリスクを持つため、駐輪場・駐輪スペースの充電ルールを検討する際はこれらの製品も含めて対象を整理しておくことをおすすめします。

まとめ

マンション駐輪場でのリチウムイオン電池火災は、モバイルバッテリーや電動アシスト自転車の普及とともに全国的に増加している実務上のリスクです。管理組合に一律の法的義務があるわけではありませんが、共用部分での出火は被害が全戸に及ぶ可能性があるため、駐輪場での個人的な充電の可否を使用細則で明確にする、専用エリアの設置を検討する、発火時の初動対応(通報・大量の水での消火)を掲示等で周知するといった対応を、早めに理事会で検討しておくことが望まれます。細則の変更や設備投資が必要になる場合は、管理規約の定めに従った手続き(総会決議等)を確認しながら進めてください。

この記事について 本記事は、マンション駐輪場におけるリチウムイオン電池火災に関する一般的な考え方を、東京消防庁・総務省消防庁の公表資料をもとに紹介する目的で作成しています。具体的な設備投資・細則変更の要否や進め方は建物ごとの事情によって異なるため、実際の検討にあたっては管理会社・マンション管理士・所轄消防署等に確認してください。
最終確認日: 2026年7月10日 / 参照: 東京消防庁「リチウムイオン電池搭載製品の出火危険」「住宅でも注意!リチウムイオン電池関連火災」、総務省消防庁「リチウムイオン電池総合対策ポータル」

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